道路交通法違反とAEO制度

(質問)

AEOの承認を受けた事業者ですが、①従業員が自家用車で通勤中に前方不注意で横断歩道を歩いていた歩行者と接触し、歩行者に全治1か月のけがを負わせ、その後の裁判で執行猶予の付いた実刑判決を受けた場合、及び②通勤中に大幅な速度超過で多額の罰金を支払った場合は、AEO企業にどのような影響がありますか?

 

(回答)お問い合わせのケースについてAEO輸出者の場合を想定して回答いたします。
  • AEO輸出者の承認要件は、関税法第67条の6(承認の要件)に規定されており、同条第1号ハにおいて、「イ及びロに規定する法令以外の法令の規定に違反して禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は受けることがなくなった日から2年を経過していない者であること」と規定されており、道路交通法も第1号ハに規定する「イ及びロに規定する法令以外の法令」に該当します。

 

  • さらに、同条第1号へにおいて「その業務についてイからホまでに該当するものを役員とする法人であること又はそのものを代理人、使用人その他の従業者として使用する者であること」と規定されており、同条第1号ハに該当する者を従業員として使用している場合は、該当します。

 

  • 他方、関税局長通達「特例輸入者の承認要件等の審査要領について」の2(1)②に、「使用人その他の従業者」の定義が規定されており、「支配人、支配人に準ずる地位にある者及びこれらのものを直接補佐する職にある者並びに通関業務(通関に関連する一切の業務をいい、通関に関連する経理、営業その他の業務を含む。)に直接携わる担当者とし、通関業務以外の業務に従事している者であって、かつ、申請者の通関業務に影響力を有していないことが明らかであるものと認められるものは除くものとする。」とされています。

 

  • したがって、ご質問の「従業員」が、本社の部長、次長や支店長、次長、及びこれらの者を直接補佐する課長等である場合、並びに貨物の輸出入に業務に関係している一般社員である場合、「使用人その他の従業者」に該当することとなり、これらの者が、執行猶予付の実刑判決(禁固刑)を受けた場合は、関税法67条の6第1号ハに該当します。

なお、AEO運送業者の承認を受けている事業者のトラック運転手が、保税運送中に同様の交通事故を起こし禁固刑を伴う判決を受けた場合、当該トラックの運転手が上記例示したような役職についていない場合は、保税運送中であってもトラック運転手は通関業務に直接携わる担当者とは言えないことから「特例輸入者の承認要件等の審査要領について」の2(1)②に規定する「使用人その他の従業者」に該当せず、第1号ハには該当しないと考えます。

 

  • 大幅な速度超過(例:一般道での時速30Km以上の速度超過)違反で罰金の支払いの刑事罰を受けた場合は、関税法67条の6の各号に該当する規定はございません。

 

  • 関税法67条の11(承認の取消し)の規定は「税関長は、次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、第67条の3第1項第1号(輸出申告の特例)の承認を取り消すことができる。」と規定されており、同条第2号に「第67条の6第1号又は第2(承認の要件)に適合しないこととなったとき」は取り消すことができる旨を規定しています。したがって、AEO事業者の一定以上の役職の従業員及び通関業務に直接関係している従業員が交通事故をおこし禁固以上の判決を受けた場合、法律的には承認の要件に適合しないこととなり、税関長はAEO輸出者の承認を取り消すことができることとなります。

しかしながら、当該事案のみをもって直ちにAEO輸出者の承認を取り消しされることは無いと考えますが、質問のような事案が発生した場合、AEOの承認を得た税関に直ちに連絡されることをお勧めします。

 

  • 関税法7条の5(AEO輸入者の承認の要件)、同51条(AEO倉庫業者の承認の要件)、同63条の4(AEO運送者の承認の要件)も同様の規定となっており、他のAEO事業者についてもご参考としてください。

なお、AEO通関業の認定については、関税法第79条、通関業法第6条の規定により認定の要件が規定されており、他のAEO事業者と若干対象者の範囲が異なっております。同じような事案が発生した場合、承認税関のAEO担当者又は通関業監督官にご相談されることをお勧めします。

 

  • なお、このような事案を未然に防ぐ観点からも、内部研修の際、交通事故に対する注意喚起を行うことも重要と考えます。

 

 

 

(以上)