通関士覆面座談会その2

通関士覆面座談会その2

通関士覆面座談会その2

出席者:

棚 橋 様 47歳(92年通関士試験合格、受験2回)
山 崎 様 41歳(04年通関士試験合格、受験2回)
木 原 様 26歳(10年通関士試験合格、受験2回)
船 木 様 36歳(09年通関士試験合格、受験2回)
青 島 様 32歳(03年通関士試験合格、受験2回)
上 席 様 51歳(90年通関士試験合格、受験2回)
 

注:出席者の氏名は仮名です。

 

 

司会: 通関士の仕事は、デスクワークが中心というイメージが一般的に強いと思うのですが、日常業務の中で必要に応じてやはり本関に行かれたりすることとか結構あるんですか?
青島: まれに。ほぼないに等しいですね。
木原: 私はないですね。
船木: 1ヵ月に1回、出ない月もあります。
司会: 棚橋さんもそうですか?
棚橋: 私は通関士というよりは別の意味で・・・怒られに行くとか、そういうのはあります ^^;
本来の通関士として行くことはあまりないですね。
船木: ないです。通関士が税関に現れるときは、あまりいいときはないから ^^;
木原: 確かに・・・><
棚橋: だいたい電話で済ませるもんね。よほどのことがない限り。
船木: そうですね。
司会: 昔と比べて、税関との関わり合いとかはどうですか?いまは99.9%、NACCS申告になってしまい、昔のようにマニュアル申告がチョロチョロあった頃なんかと比べると・・・
棚橋: そうですね。行く回数はもちろん減るし、あの頃は区分1だろうが何だろうが、全部カゴに入れて持っていかないといけなかったですし。
こんなことを言ってはあれですが、今はコンプライアンスや何だのって、税関さんともそんなに親しくできないみたいな雰囲気はありますね。
昔、私が入社したころは、税関さんとも良く飲みに行ったりとか、そういうこともあったんです。
木原: へえ。あったんですか。
棚橋: 今はそういう雰囲気ではないし、もちろんそういうことに関しては、世間の見る目も厳しいですから。
昔に比べると、今はほとんど8~9割、即時許可で落ちてしまうとなると、当然行かなければならない回数も減ってきますね。
昔は本当に、税関自体が業者さんで溢れかえって、ワイワイやっていたのが、たまに行ったりすると静かだなという感じはしますね。
木原: 私も静かな印象です。税関。。。
棚橋: 昔は大井なんか行ったら、うるさくて仕様がなかった。
司会: 今に比べたら良くも悪くも、もっと賑わっていましたよね ^^
では、そろそろ本題に入ります。言える範囲で構わないので、今まで実際に通関士のお仕事をされてきて、つい犯してしまった失敗談なんかがあったら教えて下さい。
木原: えっ?
司会: 良くも悪くもうまく編集しますので、お話しいただける範囲で。これはとんでもないことをやっちまったなとか。こういう失敗をしたから今の自分があるというようなことも含めて、ご披露いただければと思います。
棚橋さんは、いっぱいネタを持っていそうなので、最後に回して、今度は青島さんから・・・。
青島: 失敗談ですか。あまり私はないんですね。
棚橋: 優秀だな (゚_゚ )\(-_-;)
青島: やってしまったなというのは、特恵。特恵が使える貨物に対して、あきらか特恵なんですけれども、C特恵とかいうものに対して、使用できるにもかかわらず使用しないで申告してしまって、二十何万も関税を多く払ってしまったというのが・・・。やはりお金に関することですね。
あと思いつくのは、HSを間違えて申告してしまい、多く支払ってしまったことがあるぐらいです。
司会: どうですか、先輩。なかなか優秀なんですかね。
棚橋: 今の若い子は優秀です ^^;
司会: 船木さんはどうですか?
船木: 輸入部門が長いので、やはり関税、消費税の失敗が多いです。そのなかで、免税をしなければいけない場合、減免税の符号を入れなければいけないのに、それを入れ忘れてしまったまま許可になってしまい、免税される前の金額になってしまったことがあります。
ただ、申告書の記事欄という文字が打てる欄のところに、免税をしますという文言を入れていたので、その意思があるということを税関が理解してくれて、その後、税額更正を受けてくれたので、事なきを得たのですが、やはりそのときは額が額なので焦りましたし、いい勉強というか、二度と繰り返すまいと自分に言い聞かせ、スキルアップにはなりました。
司会: ちなみに、金額に関してのそういった凡ミスのようなものは、社内的にどういう処理をされるのですか。罰則とか、ペナルティのようなものは何もないんですか?
船木: あることはあるんです。
棚橋: 一応、毎日、立会報告というのがありまして、訂正したものに関しては『立会からこういう訂正がありました』というのを全課員に徹底してやって。
その原産地とかそういうミスに関しては、あまり重大だと、重大非違ということで、後ろにいらっしゃる上席課長が業務課に連絡して、業務課からまた本社の方に連絡という・・・場合によってはそういうこともあります。
司会: 木原さんはどうですか?
木原: 私も地味な失敗ならすごくたくさんあるのですが、今だから言えるというほどの失敗談はないと思うんです。
でも、地味な失敗は本当にいっぱいあるんです。HSコードを間違える、間違えるというか、知らなくて、知らない間違いが多いんですが、これはこれで大丈夫だろうと思って申告したら、しっかり解説を見れば、このHSはここには分類されないというのがわかるはずなのに、大丈夫だという思い込みで申告して、違うとなって、納税額がけっこう違うことになってしまったりとか・・・。
あとは、貨物によっては、他法令に該当するようなものとかあるのですが、化審法というよくわからない法律が、どういうものかよくわかっていなくて、どういう貨物が化審法該当なのかというのがよくわかっていないときに、それを申告書に入力しないまま申告して、区分が出たからよかったのですが、これは化審法に該当ですよと、税関の人に教えてもらって、訂正して許可にはなったのですが、結構危ないというか、他法令の入力漏れは結構危ないですよね。そういうミスは2回ぐらいありました。
司会: 御社の場合、分類に関しての社内研修的なものを定期的にやられたりしているのですか?
山崎: 金曜の夜に勉強会という感じで、いろいろ非違の事例とか・・・。
司会: たとえば税関OBのような方に講師になってもらうとか、そういうのではなくて?
山崎: あくまで自主的に集まって、みんなでやる形ですね。
司会: 山崎さんは何か失敗談とかはないですか?
山崎: 私はどちらかというと輸出が多かったのですが、非違を立て続けにポンポンと、半年ぐらいの間に何件かやってしまったら、税関から役員お呼び出しになってしまって、怒られに行ってもらったことがあります ><
司会: 御社の場合は自分のところで取り扱う貨物がメインですが、凡ミスも含めて、申告に関するミスをしたから、組んずほぐれつのような話には発展しないのですか?
棚橋: でも、輸入はシビアだよね。HSが違うことによって・・・
司会: それで責任取らされることとかあるのですか?
上席: 社内的にですか?
司会: はい。
上席: 社内的に責任を取らすということは、今まではないですね。
木原: ああ、なんか私・・・心が折れそうです。
司会: 棚橋さんはどうですか?今までやられてきて・・・
棚橋: 先に断っておきますけど、今は違いますよ ^^;
今から20年程前は、輸出と輸入の割合を比べると圧倒的に輸出の件数が多かったことも有りますが、輸出申告に関してはとにかく早く申告/許可にし、船積みするというのが通例でした。要は慎重な書類審査よりもうよりもスピードが優先されていたわけです。コンプライアンスが叫ばれているこのご時世ではありえない話ですよね。
そんなある日、輸出から輸入への異動を言い渡されました。
輸出の感覚でスピード重視のチェックを行っていたところ、『プライスレンジ(注1)が高い』 と表示された書類がありました。よくある申告で、毎回レンジが高いと出ていた書類です。「また、いつものやつか」と、とっさに判断し、いつもの様に「特注品のため高価」と理由を記入し、無事に申告/許可となったと思いきや、通貨が正式にはJPYなのにUSDで申告してしまい、申告価格が約100倍に・・・><
1区分(即時許可)だっため、弊社の口座がパンク(確か数千万円単位だったと思います)、そのときはさすがに税関の統括課からお呼び出しがかかり、「通関士を呼んでこい」ということで、「誰がやった」「はい、私です」ということで・・・。
今は本当に、若い方も、会社の方針もそうだし、通関の方針もそうだし、きちんとやらないといけない。コンプライアンスもあるし、輸出も輸入もきちんと見ましょうと。
山崎も多少の経験はあると思うけど、昔はとりあえず早く入れろみたいな・・・。そういう失敗はたぶん、今の若い人たちのほうが、我々に比べたら少ないのかもしれない。そのへんはきちんとしていると思う。昔のほうが本当に言えないようなことがたくさんあったと思いますよ ^^;
山崎: 私が営業していたとき、輸入で通関士が申告を一桁間違えて、USドルで0を多く申告してしまった。それで、更正か何かやってもらった記憶があります。
司会: ミスがだんだん少なくなってきているというのは、NACCSのシステム的なものもあるんですか?
山崎: 昔に比べて、時代がそういう時代でなくなったような気がする。
棚橋: 確かに。
山崎: 昔はミスってもそんなに・・・。
棚橋: 税関のほうもここまで厳しく言わなかったような気がするんですよね。なぜ今みたいになってしまったのか・・・。
司会: ただ日本の税関は、すごく真面目に仕事をしていると思います。
山崎: 海外は袖の下だったりとか、いろいろありますからね。
司会: そうですね、とりわけ途上国ではよく聞く話ですよね。
山崎: ブラジルなどは袖の下とかあったし。早く通関してもらうためというか・・・。そういう意味では、日本はしっかりしているなと思います。
棚橋: だから営業のとき、お客さんからタイの輸入のほうで、初めは切れないと言ったんだけれども、「これだけお金を積めばすぐ切ってやるとか言うけど、そんなことがあるんですか?」と聞かれた。「棚橋さん、通関ですよね?」と言われたけど、「それはタイの通関事情なので、わかりかねます」という答えを・・・。
木原: そんなことがあったらショックですね。
棚橋: でもまだあるでしょうね。世界には、たぶんまだそういうところが残っているかもしれないですね。
司会: 今のお話に出てきたように、海外とのクライアントとの間での失敗談というか、おもしろかったお話も含めて、ご披露できるお話はありますか?
木原: だってミスったら怖いですもん ^^;
司会: 棚橋さん、あと何かないですか。この際ですから、後輩のために。
棚橋: 本当はイチバンあるの ^^
司会: ネタを持ってる。
棚橋: ネタは持っていると思いますよ。
上席: 昔、NACCSが入った当初、システムに入っていない蔵置場所が、記事欄にYYYという3桁を入れて、NACCSで送信する。
木原: へぇ~。
上席: 知らない?
船木: 知っています。
山崎: あった、あった、そんなの。
上席: あるよね。そのシステム参加のやつはYYYと、貨物情報がないのだけれども、それを入れることによって、申告できるというのがあったのです。それをやっているのを知らずに、うちのシステムがダウンしてしまったのね。ダウンして、ほかのやつをやっていて、また申告しても、○にならない。あれ、まだ○にならない、まだ○にならない。やっと○になった。同じやつを何回も送っていたのです。YYYを送ってしまったんです。YYYは貨物情報がないから、何回も入る。
それで、関税から500万を3回申告してしまって、許可になってしまったというのが・・・。
司会: あちゃ~ ><
上席: 結局は同じものが何回も入っているので、頭を下げて2件分の許可の取り消しをしてもらうというのがあったんですけれども、それはすごく印象に残っていますね。
司会: 今はもうないですよね?
上席: 今はもう貨物情報があるので、それが許可になってしまったら、それで次に送ったら許可済みですという形に必ずなるようになってるんですね。
山崎: あれは、搬入になっていなくても許可になってしまうのが怖いんですよね。
上席: そうそう。
棚橋: 時効だから言ってしまうけど、今はもう倉庫と通関業者と税関がつながっているから、入っていなかったら申告などできないけれども、昔は倉庫と通関業者はつながっていなかったから、搬入確認という行為があったんだけれども、某ドレージ(注2)の同期が、全然ドレージが回らない。絶対この船に積まなければいけない。
「絶対今日中に入れるから、棚橋、申告して!」
「えっ、ちょっと待ってよ」って ^^;
「それがもし今日中に入らなかったら、俺は通関士を・・・」
「大丈夫。俺のクビを賭けるから申告して!」というから、何回か申告しましたよ。
木原: 何回か ^^
棚橋: そうすると、許可が切れて、無事船には積めたけれども、もしそれで何らかのドレージが入らなかったりしたら、それはもう・・・・・。
ということができてしまったのだけれども、今はもう全部している。そういう点では空搬というか、あれはできない。変わったのかもしれない。その点いいと思うよ。いいと思うというか、もう悪いことはできなくなった。
木原: やはり、ある程度システムのおかげで悪いことはできなくなっている ^^; システムが失敗を防いでくれているのかもしれないですね。
船木: 進化しているんだね。
木原: そうかもしれない。
山崎: 昔は輸入の搬確とかも、宿とかに電話して。
木原: えぇ~@@
山崎: 一件、一件。
木原: 面倒くさい。
山崎: システムにないやつ。だから、個数とマークと重量とか・・・。
木原: マーク? 口頭で言ったら大変なことに。
山崎: そうそう。口頭で確認して、それで申告できたの。
木原: えぇ~ @@
棚橋: 一文字、一文字。
山崎: うん、一文字、一文字。
上席: 新入社員が初めて緊張する通関課の仕事は、輸入の搬確なんだ ^^
「(株)何某です。輸入の搬入確認をお願いします」と言って、相手はベテランなので、バンバン聞いてくるのを答えるわけです。
僕が初めてやったときはすごく緊張して、あちらはマークをイングランドのEとか、スペインのSとか言う。そのEを言ってくれなくて、イングランド、スペイン、ブラジル、何とかと・・・全部。
木原: えぇ? 逆にわかりづらい ><
上席: スペイン、ブラジル、追いつかないなと思って、書いていったら、実は全部頭文字できるというようなことで、そういうのがありましたけどね。
木原: 大変ですね。
棚橋: 新入社員のときに、何かすごく原始的だなと思った。それで、一文字でもマークが違うと、貨物が出ないから、それをまた税関に持っていって直してもらってまた持ってくる。非常に・・・。
木原: 時間がかかってしまいますね。
棚橋: 何かすごく効率悪いなと、新入社員ながらに思ったものです。
山崎: だから通関士を取る前は、朝、だいたい搬確、やっていましたよね? システムに参加していないと、けっこうヤードでもあったから。
棚橋: だいたい若い子の仕事だから。
木原: あっ、私も・・・ ^^;
山崎: 入港日がいつだとか。間違えてしまって、後で搬出とかができなくなってしまうから、結構大変だった。
 To be Continued
注1: プライスレンジとは、税関が設定した個々の品目について、妥当な申告価格を載せた価格範囲(プライスレンジ)表というものを持っており(当然、部外秘)、これより高いか安いかでレンジ高、レンジ安のワーニングが申告書上に明記されます。
注2: 年末年始、GW(ゴールデンウィーク)、お盆の前後は輸出入申告が集中し件数も非常に多くなります、船便にて輸出/輸入をする場合、現在殆どコンテナ(20フィーター/40フィーター)に詰めて船積みします(一部木材など直に積込む場合も有りますが・・・)。 申告件数が増えるということは、当然コンテナの本数も通常の何倍にもなります。
コンテナを船に積込む場所をCY(コンテナヤード)と言いますが、休み前後はCYにコンテナを入れるため埠頭内の道路が長蛇の列となり身動きが出来ないほどです。コンテナを牽引するトラクター・ヘッドをドレージ(ドレー)と呼びます。