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ハイテク産業保護のためEUが中国の訴訟差止命令を問題としてWTOに提訴(EU)

EU

欧州連合(EU)は2022年2月18日、EU企業がその保有する重要な特許を保護するため中国以外の国の裁判所に提訴しようとしても中国はこれを厳しく制限しているとして世界貿易機関(WTO)に提訴したことを発表した。

 

EUはその発表の中で、今回WTOに提訴した背景及び理由等について説明し、2020年8月、中国の最高人民法院が、中国の裁判所は「訴訟差止命令(anti-suit injunction)」を発して特許所有者がその権利を行使するために中国以外の国の裁判所で訴訟を起こすことを禁じることができるとの決定(ファーウェイ v Conversant)を下し、さらに同法院は、この命令に違反した場合には1日当り百万人民元(約13万9千ユーロ:約1,700万円)の罰金を科すことを決定したこと、この最高人民法院での決定以降、中国の裁判所は外国の特許所有者に対して4回にわたって訴訟差止命令(シャオミ v InterDigital、中興通訊 v Conversant、OPPO v シャープ、サムスン v Ericsson)を出していること等を挙げ、中国のメーカーはより安価で、場合によっては対価なしで欧州の技術にアクセスするため訴訟差止命令を求めるようになったとし、このような中国の政策は、欧州における技術革新や成長を著しく損なうもので、欧州企業から権利を行使することを事実上奪っていることを挙げている。

 

EUはその上で、これまでEUは中国側に様々な機会をとらえてこの問題の解決を求めてきたが徒労に終わった。EUの見解では中国のこのような措置はWTOのTRIPS協定に違反するものであり、EUはWTOの紛争解決手続きに基づく協議を中国に申し入れることとなった。この協議はWTOの紛争解決手続きの第一段階のもので、60日以内に協議が不調に終われば裁判の第一審に相当するパネル(紛争解決小委員会)の設置をEUは求めることとなろうと述べている。

 

EUが今回特に問題としている特許は標準必須特許(SEPs)で、一定の国際的な標準に準拠した製品を製造するために不可欠な特許である。標準必須特許で保護されている技術の使用については、特許所有者はその特許を使用するメーカーに対してFRAND条件(公平、合理的かつ非差別的な条件)でその使用を認めることを約束している。したがって、例えば携帯電話のメーカーは特許所有者と交渉してライセンス料を支払ってライセンスを受ける必要がある。メーカーがライセンスを取得せず、あるいはライセンス料の支払いを拒絶すれば、特許所有者はその権利を行使して、その製品の販売を停止させるため裁判所に訴えることができる。EUは、特に3G、4G、5G等の重要な技術の権利を有するEUの企業が、中国の携帯電話のメーカーによってそのEU企業の特許が違法に、あるいは適切な対価なしで使用されている場合にその権利を保護するため外国で訴訟を起こそうとしても中国の裁判所の決定によって厳しく制限されていると述べている。

 

(出典:2022年2月18日付けの欧州委員会のプレスリリース及び2022年2月22日付けのWTO文書)