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日米両政府が、鉄鋼関税の一部免除で合意(USTR)

USTR

日米両政府は2022年2月7日、鉄鋼製品の一部について、現在課されている追加関税を関税割当方式(TRQ)に置き換えて、一定の割当量までの鉄鋼製品の日本からの輸入に対して関税を免除することで合意した。

 

米国は2018年3月8日のトランプ政権下での決定に基づき、鉄鋼製品とアルミニウム製品の輸入増が国家安全保障上の脅威になっていることを理由に米通商拡大法232条に基づきそれぞれ25%と10%の関税が上乗せされた。今回の合意によって一部の鉄鋼製品については一定の数量までの追加関税は免除される。

 

合意の実施時期は2022年4月1日である。アルミニウム製品については今回の合意には含まれておらずこれまで通り10%の関税が上乗せされる。

 

関税の免除が適用される一定枠は、2018年~2019年の2年間の年間平均量をベースに決められ、年間125万トンとされている。この数量に達するまでは追加関係が免除される(関税割当方式)。この一定枠は四半期ごとに管理され、一定枠の未消化があれば一定の方式に基づき繰り越される。またこの免除の適用対象品目は、鉄鋼製品のうち熱延コイル等の54品目(米国関税率表の品目)で、それ以外の品目については見送られた。

 

この関税割当方式の適用は、2021年10月の米国と欧州連合(EU)間でEUからの鉄鋼製品の輸入について適用することで合意されており、EUとの合意はすでに本年1月1日から発効している。

 

レモンド米商務長官は、今回の合意について、米国の製造を再活性化させ、また消費者や企業のコスト削減を図るためバイデン大統領から関税無税による日本からの輸入について232条措置を再交渉するよう指示されたもので、今回の合意により、米国の鉄鋼業の強化、競争力の確保を図り、同時により安価な鉄鋼製品へのアクセスの改善が図られ、米国にとって最も重要な同盟国の一つである日本との懸案に対処することできた。今回の合意はEUとの間での交渉を踏まえたものであり、これによって中国の不公正な貿易慣行に対抗する上で同盟国との関係の再構築を促すこととなると述べた。

 

また、米通商代表部(USTR)のタイ代表は、この合意は、EUとの合意と合わせて、中国の鉄鋼分野での反競争的、非市場的な貿易措置に対抗し、同時にバイデン大統領の意欲的な地球規模の気候変動の課題を後押しするものであるとコメントした。

 

萩生田経済産業大臣は、「232条関税はWTOルールに不整合となりうると考えており、鉄鋼・アルミ二ウムへの同関税について、WTOルールに整合的な形での完全解決を求めてきたところ。今般の米国の対応は、そうした解決に向けた一歩であると考えるが、米国に対しては、引き続き、完全解決を強く求めていく」との談話を発表した。

 

また、同日発表された日米共同声明において、鉄鋼製品とアルミニウム製品の非市場的な過剰生産能力の問題が取り上げられ、日米共通の課題としてこの問題について今後協力することで合意された。

 

具体的には、貿易救済措置及び税関当局間の協力として関税の逋脱や回避行為等の摘発のための情報やベストプラクティスの共有、鉄鋼やアルミニウム製品の両国間の貿易についてのモニタリング、非市場的な過剰生産能力やカーボン強度(carbon-intensity)に関する協力等が挙げられている。

 

このうち、非市場的な過剰生産能力やカーボン強度に関する協力に関しては、日本はこの共同声明から半年以内に、ダンピング防止関税、相殺関税、セーフガード措置等を発動する手続きに関して適切な国内措置をとること、第三国市場から輸入されるものを含め、鉄鋼、アルミニウム製品の輸入データを両国間で共有し、さらに日本は非市場的な過剰生産能力への取り組みのための国内措置や世界的な鉄鋼、アルミニウム市場の状況について米国と協議すること等が含まれる。

 

両国政府は、今回の合意の運用や協力について世界の鉄鋼やアルミニウム市場、米国の需要や輸入についての変化を踏まえて毎年レビューすることとなった。

 

(出典:2022年2月7日付けの米商務省及びUSTRの発表、2022年2月8日付けの経済産業大臣談話)