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リトアニアへの貿易措置を巡りEUが中国にWTO協議を申入れ(WTO)

WTO

欧州連合(EU)は2022年1月27日、リトアニアに対して中国がとっている貿易措置に関して、世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きに基づき、中国側に協議を申し入れたことを発表した。WTO事務局は2022年1月31日付けでこの申入れを公表した。

 

EUはその理由として中国はリトアニアに対して差別的な貿易措置をとっており、EUの単一市場からの輸出品にも打撃を与えていること、これらの措置はWTOのルールに違反し、リトアニアをはじめ他のEU加盟国の輸出者にも被害を与え、さらにリトアニア以外のEU加盟国から輸出される貨物でリトアニアの部品や部材等が使われている貨物までもが差別的な措置の対象となっていることを挙げている。

 

中国による具体的な措置として、特に2021年第4四半期前後から、EU加盟国のリトアニアを原産地とする貨物の輸入者、同国を経由する貨物の輸入者は、中国税関当局から輸入手続上必要なデータの入力について電算システム上のエラーが発生していること等を理由に通関上の制限を受けていること、中国の港湾でコンテナ貨物がブロックされていること、通関手続きを要請しても中国税関が適切に対応していないこと等を挙げ、このような制限的な措置は新たなもので、頻繁に且つ執拗に行われていると説明している。さらに、中国からリトアニアに輸出される貨物についても中国税関が通関手続きを適切に行っていないこと、またリトアニアの企業が中国から金融サービスを受けることが難しくなり、リトアニアが発給した検疫証明書が中国税関によって拒絶されていることも挙げている。

 

EUは以上のような例を挙げた上で、EUからの貨物に対する輸入の禁止・制限措置、EUへの中国からの輸出の禁止・制限措置、金融サービス面での制限・禁止措置にみられる法的な、あるいは事実上の適用は一般協定(GATT)、貿易円滑化協定(TFA)、衛生植物検疫措置協定(SPS)、サービス貿易協定(GATS)等のWTOルールに違反するものと断じている。

 

欧州委員会の通商問題を担当しているドムブロフスキス執行副委員長は、本件を二国間で解決することができなかったためWTOの紛争解決手続きに基づく協議を要請することとなったと述べた上で、EUは単一市場の一体性を脅かすようなWTOルールの違反に対しては結束して迅速に対応する。また同時にこのような状況をなくすための外交的努力も続けると述べた。

 

本件協議が60日以内に不調に終われば、EUは裁判の第一審に当たる紛争解決小委員会(パネル)の設置を求めることができる。

 

欧州委員会は今回のような問題にEUとして効果的に対処できるよう「反抑圧規則(Anti-Coercion Instrument)」を準備し、現在欧州議会及び理事会で審議されている。そのためその適用な目下のところ見込めず、またパネルの報告如何によってはWTOの最終審に当たる上級委員会に上訴することが考えられるが、上級委員会はその機能を停止しており、今後の見通しは必ずしも見通せない。

 

米通商代表部(USTR)は1月27日、中国のリトアニアへの措置について強い懸念を表明し、同じ意見を持つ国と協力し、WTOの協議に参加することを表明した。またカナダ政府も中国の抑圧的な措置に反対すると述べ、中国の措置はルールに基づく国際貿易システムを蝕むもので、多角的な貿易システムを守るためにもWTOの協議には参加すると表明している。

 

 

(出典:2022年1月31日付けのWTO事務局文書、1月27日付けのUSTRのプレスリリース、2月10日付けのカナダ政府の発表等)