米国与野党の超党派議員、貿易促進権限(TPA)法案を上下両院に提出

 

米議会―貿易促進権限(TPA)法案―

 

1月9日、米議会の超党派議員により2014年貿易促進権限法案(TPA法案)が上下両院に提出されました。この法案提出説明において、米国、日本等の12か国が参加して交渉が進められている環太平洋経済連携協定(TPP)、欧州連合(EU)28か国との間で交渉中の環大西洋貿易・投資連携協定(T-TIP)、米国を含む23か国が参加して交渉しているサービス貿易に関する協定(TISA)、さらに世界貿易機関の159か国との交渉について言及し、特にTPP及びT-TIPが締結されれば、約10億人の消費をカバーする市場が開放され、世界のGDPの2/3、世界貿易の65%がその対象となり、また世界全体のサービス貿易の70%以上が含まれることになるとし、2007年に失効した貿易促進権限法案を更新することはこのような交渉を成功裏に進める上で必要な措置であると述べてこの法案の必要性を強調しています。

 

米国では、憲法上、立法権限として諸外国との通商を規制する権限が議会に認められているため、今般の貿易促進権限法案では通商交渉に関する権限を一定の範囲、一定の期間について大統領(行政府)に委任することを内容としています。同時に通商交渉についての議会への事前、交渉中及び事後の通報や協議を確保することを条件としています。また交渉の内容が委任された範囲や制限等の条件を満たしているかどうかを審査したうえで、条件が満たされていれば、議会は行政府が結んだ外国政府との通商合意をその内容を修正することなく、一括して承認するかしないかを決定するとしています。

 

この法案には、交渉の具体的な目標として、物品の貿易、サービス貿易、農産品貿易、外国投資、知的財産、国家所有企業、規制、労働、環境、通貨等の18項目にわたる目標が掲げられています。

 

このうち、知的財産の分野では、次の3点が交渉の目標として掲げられています。

1.知的財産権の適切で、効果的な保護をさらに推進する。具体的な内容は次の通りです。

   ① 世界貿易機関(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」、特にその中の権利行使義務の規定を迅速且つ完全に実施し、

        また今後の知的財産権に関係する通商協定においては、米国並みの保護基準を確保すること

   ② 合法的なデジタル貿易が促進されるよう知的財産権を化体した商品の送信や配送等の新たに開発された技術や方法の保護を強化すること

   ③ 知的財産権の活用、取得、範囲、維持、使用及び権利行使に係わる事項に関して差別的な扱いを排除し、撤廃すること

   ④ 保護や権利行使の基準を技術的な発展に合致させること。特に権利所有者の著作物のインターネットその他の伝達メディアを通じた使用を管理し、

        無許諾での著作物の使用を防止するため、権利所有者に対して法的、技術的手段を確保すること

   ⑤ 利用しやすく、迅速で、効果的な民事、行政及び刑事上の権利行使のメカニズムを使って、知的財産権の強い権利行使を認めること

   ⑥ サイバー窃取や海賊行為を含め、知的財産権の侵害に政府機関が関与することを防止し、これをなくすこと

2.知的財産権に依存する米国民に対して、公正で、平等な、且つ差別のない市場アクセスを確保する。

3.2001年11月14日、カタールのドーハで開催されたWTOの第4回閣僚会議で採択された「TRIPS協定と公衆の健康に関する宣言」を尊重し、通商協定では革新を育成し、医薬品に対するアクセスが促進されるようにする。

 

米通商代表部(USTR)のフロマン代表は、1月9日、このTPA法案に関して、同法案の提出を歓迎するとし、今後締結を目指している「通商協定の交渉をどのように進め、交渉過程で議会がどのような役割を果たすかについて議会側と活発に意見交換することを期待している。超党派で提出され、広い支持を受けている貿易促進権限法案が成立するよう(上院)財政委員会や(下院)歳入委員会の議員を含むすべての議員と直接対話することを熱望している」と述べ、さらに「米国はもはや傍観者でいる余裕がない」として今後の交渉において米国が主導的な役割を果たし、様々な課題に対して米国の価値基準が反映するよう今後の通商交渉に臨むと述べています。

 

(法案内容はhttp://www.finance.senate.gov/legislation/details/?id=b3d47ded-5056-a032-525a-5190a4e86728、フロマン代表のコメントについては1月9日付けのUSTRのプレスリリースを参照)