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米ボーイング社への補助金を巡るEUとの紛争―WTOがEUに対米報復措置を認める―(WTO)

●WTO

世界貿易機関(WTO)は、米国のボーイング社への補助金を巡る欧州連合(EU)との紛争に関し、2020年10月13日、年間約40億ドル(約4,200億円)相当の報復措置をEUが執ることを認める仲裁結果を発表した。

 

航空機への補助金を巡るWTOでの米・EU間の紛争はWTOで最も長く争われてきた紛争で、米国が2004年10月、EUとその加盟4か国(フランス、ドイツ、スペイン及び英国)のエアバスへの補助金の支給はWTO協定に違反するとしてWTOに訴えたことから始まっている。EUは、この米国の訴えに対抗して、米国のボーイング社への補助金問題を訴え、その結果米国とEUの訴えはそれぞれ異なるWTOのパネル(紛争解決小委員会)で争われることとなった。

 

米国からEUへの訴えについては、2010年6月末パネルはEUがWTO協定に違反してエアバスA380に対して約170億ドル(約1兆7,800億円)相当の補助金を支給しており、そのためボーイング社は300機を超える航空機の販売機会を失い、世界規模でその市場シェアも失ったこと等を内容とした報告書を公表したが、米国はEUがその後もWTO協定違反とされた補助金の支給を継続し、さらに新たにエアバスA350に対しても何十億ユーロもの補助金を支給していると申し立て、いずれの補助金についても撤廃するよう求めた。2018年5月WTOはA350への補助金についてもWTO協定に違反していることを決定した。その後紆余曲折を経て2019年10月WTOの仲裁人は米国に対しEUへの報復措置として年間75億ドル(約7,870億円)相当のEUからの輸入品に報復関税をとることを認めた。米国は2019年10月EU加盟の上記4か国からの輸入品を中心に報復関税を発動した。

 

一方、EUから米国への訴えにおいて、EUは2004年米国のボーイング社への補助金支給はWTO協定に違反していると申し立て、WTOは米国が連邦及び州レベルでボーイング社に対して研究開発資金や税制上の優遇措置を与えていることを認めた。ただ米国の補助金は市場への影響面ではエアバスに比べると制限的であるとした。米国はその後このWTOの決定を踏まえ、ボーイング社への資金提供を見直し、税制面の優遇措置もほぼ撤廃したとの発表を行った。しかしEUは米国が執った措置はWTOの決定内容に合致した十分な措置かどうかを問題視し、2019年4月WTOのパネル(履行確認)は2012年末の時点では西部ワシントン州の税制上の優遇措置はEUに対して悪影響を与えているとした。米国は、2020年4月ワシントン州では税制上の優遇措置も完全に撤廃され、EUが問題としていた補助金についてはすべてなくなった説明している。

 

USTRは、今回WTOがEUに対し報復措置を認めたことについて、WTOは今年4月に税制面の優遇措置が廃止されたことを考慮していないことは明らかで、EUへの損害については2012年~2015年の間の審査に限られ、約40億ドルはこの期間に対応しているとし、優遇措置が撤廃されている以上EUは米国に対して報復措置をとる正当な根拠は最早なくなっていると述べ、すでに撤廃された措置をもとに報復関税を課すことはWTOの原則に反しており、EUが報復関税を発動すれば米国としては何らかの措置をとらざるを得ないと述べた。USTRライトハイザー代表は、米国がとった措置についてのEU側の回答を目下待っているところであり、この分野で公正な競争と均等な競争条件を回復するためEU側とこれまで続けてきた交渉をさらに強化する用意があると述べた。

 

一方、欧州委員会の通商担当ドムブロフスキス上級副委員長は、今回のWTOの決定によってボーイング社への補助金はWTO協定の下で違法なものであることが認められたとしつつも、追加関税の発動は双方にとって利益になるものではなくこれを発動しないことを望んでいる。米国が2019年に発動したEUからの輸入品への関税を撤廃し、双方の関係を前進させ、今後新たな重要な分野で協力することを期待している。米国との協議は今後も真剣に行うが、仮に協議が不調に終わることになれば米国と同じように報復措置をとらざるを得ないと述べた。

 

なお、EUは、米国が発動している報復関税に関連して、WTOの決定を完全に履行するため今年7月ドイツと英国に続きフランスとスペインも是正措置をとった。それにもかかわらず米国は報復関税を適用しているが、WTOの決定内容は2018年の上級委員会の決定に基づくもので、EUとその加盟国がWTOの決定を履行するためにその後とった措置を考慮していないとして、米国と同じような趣旨の反論をしている。

 

(出典:2020年10月13日付けのUSTR及び欧州委員会のプレスリリース等より)