本試験問題と解答・解説


平成16年度第38回通関士試験解答
  

〔通関業法関係〕(時間45分)

〔解答と解説〕

〔記述式〕

第1問
(通関業の許可の基準及び欠格事由)

正解

1 経営
2 人的
3 通関業務
4 社会的
5 通関士
6 破産者
7 禁錮
8 三(3)
9 通告
10 二(2)


参照条文
(「参照条文」は、問題の文章の各項についてのものです。以下記述式の「解答と解説」において同じ。)
1 通関業法第5条(許可の基準)
 イ 第1号ロ 第2号ハ 第4号
2 同法第6条(欠格事由)
 イ 第2号ロ 第3号ハ 第4号ニ 第6号

第2問
(通関業者及び通関士に課せられている義務、禁止行為)

正解

1 理由
2 秘密
3 信用
4 名義
5 種類
6 一(1)
7 二(2)
8 帳簿
9 貸借対照表
10 損益計算書

関係条項
 1 通関業法第19条(秘密を守る義務)
 2 同法第20条(信用失墜行為の禁止)
 3 同法第17条、第33条(名義貸しの禁止)
 4 同法第13条第1項(通関士の設置)、同法施行令第4条(通関士の設置)
 5 同法第22条第1項(記帳、届出、報告等)、同法施行令第10条(定期報告書)



〔短答式〕

第1問(定義)

正解 3

解説
(通関業務に該当しないもの=b、d)
 次の手続は、いずれも関連業務とされているので、これらの手続を他人の依頼によりすることがあるとしても、「通関業務」に該当することはない。《通関業法第7条》
 b 消費税に関する手続であることから、関連業務とされている。
 (輸入の申告からその許可を受けるまでの間に、消費税法の規定により消費税に関する納税申告手続が取られているが、この手続は関税法その他関税に関する法令に基づき税関官署に対してする手続ではないことから、関連業務とされている。)
 d 設問の手続は、通関業者のほか倉庫業者などもすることができる手続であることから、通関業務に先行する関連業務とされている。
(通関業務に該当するもの=a、c、e)
次の手続は、いずれも「通関手続」とされている。したがって、この手続を他人の依頼によりすることは、「通関業務」に該当する。《同法第2条第1号》
 a 輸入の許可前における貨物の引取りの承認申請手続は、関税法の規定に基づき税関官署に対してする輸入の申告から許可を受けるまでの間に行われる手続であるので、「通関手続」とされている。 《同法第2条第1号イ(1)》
 c 関税の額に関する更正の請求手続は、関税の確定及び納付に関するものであるので、「通関手続」とされている。この手続が輸入の許可後において行われることがあるとしても、同様である。《同法第2条第1号イ(1)かっこ書》
 e 本邦籍であるかどうかを問わず外国貿易船に内国貨物である船用品を積み込むことの承認申告手続は、「通関手続」とされている。《同法第2条第1号イ(1)(三)》

第2問(通関業の許可の申請) 

正解 3

解説
(正=b、c)
 b 「地域限定の条件」の付与の要否等を判断するために必要となるので、許可申請書には、「通関業務を行おうとする地域」を記載しなければならないこととされている。《通関業法第4条第1項第4号》
 c 申請者が通関業法第5条に規定する基準に適合するかどうかを判断するためには、許可申請書の記載事項のみでは不十分であるので、これを補足するために、同申請書には、所要の書類(申請者の資産の状況を示す書面)を添付しなければならないこととされている。《同法第4条第2項》
(誤=a、d、e)
 a 通関業の許可申請書に記載しなければならないのは、通関業務を行なおうとする営業所ごとに置こうとする通関士の数(「従業者の数」ではない。)である。《同法第4条第1項第3号》
 通関士の数は、通関業の許可を受けようとする者の業務遂行能力(同法第5条第2号参照。)を評価するために必要な事項である。
 d 通関業法には、個人(自然人)が通関業の許可を受けることを禁止する規定はない。
 なお、通関業法には、個人が通関業の許可を受けようとし、又は受けた場合のことを前提とした規定(同法第4条第1項第1号、第6条第1号、第3号、第10条第1項第2号、同法施行令第10条第1項かっこ書参照。)が設けられている。
 e 通関業法には、設問のような趣旨の規定はない。

第3問(通関業の許可の消滅又は取消し) 

正解 3

解説
(正=b、c)
 b 通関業の許可の取消しは、通関業者について通関業を営む権利を剥奪することになるので、その手続を慎重に進める必要がある。このため,許可の取消しは,通関業務に関し学識経験のある審査委員の意見を聞き、処分の妥当性などを慎重に判断したうえで行うこととされている。《通関業法第37条第1項》
 c 欠格事由に該当する者は、通関業務を行うのにふさわしくない者として、通関業の許可を受けることはできない。《同法第6条》
通関業の許可を受けた者が、後になって欠格事由に該当する(成年被後見人に該当する)こととなるということがあるが、そのような場合も同様に、通関業の許可を存続させることは適当ではないので、税関長は、通関業の許可を取り消すことができることとされている。《同法第11条第1項第2号》
(誤=a、d、e)
 a 通関業者について、通関業の許可の取消し原因がある場合には、税関長は、許可の取消しをすることができることとされているが、必ずしも、取り消さなければならないことととはされていない。《同法第11条第1項第1号》 
 税関長は、取消し原因の内容を慎重に検討し、取消しの要否を判断することになる。
 d 通関業者が破産の宣告を受けたときは、税関長が改めて許可の取消しの手続をとるまでもなく、当然に、通関業の許可は消滅することとされている。 《同法第10条第1項第3号》
 e 法人(株式会社)である通関業者が会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けたとしても、破産の宣告を受けたのではないので、その許可が消滅することはない。《同法第10条第1項第3号》
(注)更生手続
窮境にあるが再建の見込みのある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とした手続である。

第4問(通関士の設置) 

正解 4

解説
(正=4)
 通関士の設置を要する営業所には、専任の通関士一人以上を置かなければならないこととされているが、営業所における通関業務の量が少ない場合において、税関長の承認を受けたときは、通関士は専任であることを要しないこととされている。《通関業法施行令第4条第1項》
 なお、この場合の承認は、専任でない通関士により通関業務を処理することが可能であると認められるときに限り行われる。

(誤=1、2、3、5)
 1 通関業の許可の条件として「期限」が付されることがあるが、このような条件が付されることがあるとしても、通関士の設置義務が免除されることはない。
(注)期限が付される場合
 通関業の許可には、営業の状態等について追跡又は監視を必要とする場合には、許可の条件として、「期限」が付されることがある。
 2 通関士の設置を要しない地域にある営業所においては、仮に、その取り扱う貨物が多品目にわたることがあるとしても、通関士の設置が義務付けられることはない。
《同法第13条第1項第1号》
 3 設問の場合においても、貨物限定の条件が付されているときを除き、通関士の設置義務が免除されることはない。
 5 関連業務の処理に関して、通関士の設置が義務付けられることはない。

第5問(通関士の審査) 

正解 3

解説
通関士の審査及び記名押印を必要としない書類は、「包括保税運送承認申告書」である。
したがって、審査及び記名押印を必要としない書類が含まれている組合せは、3である。
(注)包括保税運送承認申告書
「包括保税運送承認申告書」は、関連業務に係る書類であり、通関業法第14条、同法施行令第6条において、「通関士の審査を要する通関書類」として規定されていないものである。

第6問(更正に関する意見の聴取) 

正解 4

解説
(意見を述べる機会を与える必要があるもの=c、e)
 次の増額更正をする場合には、税関と納税義務者(依頼者)に代わって納税申告を行った通関業者との間に見解の相違が生じやすく、その結果、納税義務者(依頼者)の利益に直接影響を与えることとなるので、納税義務者(依頼者)に代わって納税申告を行った通関業者に意見を述べる機会を与えなければならないこととされている。《通関業法第15条本文》
 c 関税率表の適用上の所属の相違に基因する増額更正
 e 関税に関する法令の適用上の解釈の相違に基因する増額更正
(必要がないもの=a、b、d)
次のような更正をするとしても、納税義務者(依頼者)の正当な利益を害するおそれはないので、納税義務者(依頼者)に代わって納税申告を行った通関業者の意見を聴取する必要はないこととされている。《同法第15条ただし書》
 a 計算の誤りに基因する増額更正
 b 減額更正
 d 客観的に明らかな誤り(換算レートの適用の誤り)に基因する増額更正

第7問(通関業法上の義務) 

正解 3

解説
(正=3)
 通関業者は、財務大臣が定めた通関業務料金のほか、関連業務の料金の額についても、営業所において依頼者の見やすいように掲示しなければならないこととされている。《通関業法第18条第1項》
 これは、財務大臣が定めた通関業務料金及び関連業務の料金の額を依頼者に知らしめることにより、通関業者における通関業務等料金の収受の実効を確保するためにとられている措置である。
(誤=1、2、4、5)
 1 通関業者に課されているのは、財務大臣が定めた通関業務料金のほか、関連業務の料金の額についても、営業所において依頼者の見やすいように掲示する義務である。《同法第18条第1項》
 2 通関業者は、通関業務を行う営業所を新たに設けようとするときは、その営業所の所在地を管轄する税関長の許可を受けなければならない。《同法第8条第1項》
 4 通関業者が合併により解散したときは、通関業の許可は消滅するので、遅滞なくその旨を税関長に届け出なければならないこととされている。
 しかし、その場合の届出義務者は、法人自体が存在しないことになっているので、「通関業者であった法人を代表する役員であった者」とされている。《同法第12条第3号、同法施行令第3条第4号》
 5 通関業者は、通関業の許可の申請に際して税関長に提出した通関業の許可申請書に記載した事項のうち、通関業務を行なおうとする営業所の「名称、所在地」が変更になった場合には、その変更について税関長に届出なければならない。《同法第12条第1号、第4条第1項第2号》

第8問(記帳、届出、報告等) 

正解 2

解説
(誤=a、d)
 a 定期報告書は、事業年度ごとに、翌年6月30日までに提出しなければならないこととされている。《通関業法施行令第10条第1項》
 d 設問にあるように、事業年度が「・・・・までの間に二以上の事業年度が終了する」通関業者は、これらを通じた期間ごとに、税関長に定期報告書を提出すればよいこととされている。《同法施行令第10条第1項かっこ書》
(正=b、c、e)
 b 通関業者に対する国の適切な指導、監督ができるようにするために、通関士以外の通関業務の従業者の異動についても、通関業者に対し、税関長への届出義務が課されている。《同法第22条第2項、同法施行令第9条第1項》
 c 通関業務完結後発見される誤りの原因の調査等の便宜に資するために、当該業務に関し依頼者から依頼を受けたことを証する書類(業務委託契約書又は委任状等)については、通関業者に、その作成の日後3年間の保存義務が課されている。《同法第22条第1項、同法施行令第8条第2項、第3項》
 e 通関業者が、通関業務を行う営業所に新たに当該通関業務に従事する者を置いた場合には、税関長に提出する従業者の異動に関する届出書に、その者の履歴書その他参考となるべき書面の添付が必要とされている。《同法第22条第2項、同法施行令第9条第2項》

第9問(確認及び通関士の資格の喪失) 

正解 2

解説
(正=2)
 通関士が、所得税法の規定に該当する違反行為をして罰金の刑に処せられると、通関業法第6条第4号(欠格事由)に該当することになる。通関士が、欠格事由に該当するときは、通関士でなくなることとされている。《通関業法第32条第2号》
(誤=1、3、4、5)
 1 通関士が通関業務に従事しないこととなったときは、通関士でなくなる。《同法第32条第1号》
 3 通関業務への従事年数は、税関長の確認を受けるための要件とはされていない。
 4 懲戒処分を受けた通関士が、その資格を喪失するのは、2年間通関業務に従事することを禁止された場合に限られている。(従事禁止→欠格事由該当→資格喪失)《同法第6条、第32条第2号》
 5 通関士試験に合格した者を通関士という名称を用いないで通関業務に従事させる場合には、税関長の確認を受ける必要はない。《同法第31条第1項》

第10問(通関業者に対する監督処分又は通関士に対する懲戒処) 

正解 5

解説
(誤=5)
 税関長が通関士に対して懲戒処分をしようとするときは、当該通関士がその業務に従事する通関業者の意見を聞き、手続を慎重に進めることとされているが、審査委員の意見を聞くこととはされていない。《通関業法第37条第1項》
(正=1、2、3、4)
 1 通関士に対する懲戒処分として、1年以内の期間を定めてその者が通関業務へ従事することを停止する処分が規定されている。《同法第35条第1項》
 2 通関業者に対する監督処分として、1年以内の期間を定めて通関業務の全部又は一部を停止する処分が規定されている。《同法第34条第1項》
 3 通関士に対する懲戒処分として、2年間通関業務へ従事することを禁止する処分が規定されている。《同法第35条第1項》
 4 通関士は、その職責に鑑み、その行為について依頼者に疑義をもたれることがあってはならないものとされている。このため、通関士に法令違反などの事実があると認めたときは、設問にあるような措置を求めることができることとされている。《同法第36条》


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