本試験問題と解答・解説


平成9年度第31回通関士試験問題と解答
〔関税法、関税定率法その他関税に関する法律(関税暫定措置法等)及び
外国為替及び外国貿易管理法(第六章に係る部分に限る。)〕
(時間2時間)


【記 述 式】
第1問(保税運送制度の内容)
模範解答(解答例)

  1. 保税運送制度の内容
    外国貨物は、税関長に申告し、その承認を受けて、開港、税関空港、保税地域、税関官署及び関税法第30条第2号の規定により税関長が指定した場所(他所蔵置場所)相互間に限り、外国貨物のまま運送することができる。税関長は、保税運送の承認をする場合においては、相当と認められる運送の期間を指定しなければならない。

  2. 保税運送貨物を発送する際の手続
    保税運送貨物を発送する際には、運送目録を税関に提示し、その確認を受けなければならない。

  3. 保税運送貨物が運送先に到着した際の手続
    保税運送貨物が運送先に到着したときは、保税運送の承認を受けた者は、当該保税運送貨物の発送の際に税関の確認を受けた運送目録を、直ちに到着地の税関に提示し、その確認を受けなければならない。
第2問(関税割当制度)
模範解答(解答例)

  1. 関税割当制度の目的及び内容
    関税割当制度は、特定の輸入物品を安価に入手しようとする需要者側の要請と、当該物品の輸入量の増大を抑制しようとする国内生産者側の要請とを二重関税率により調整しようとするもので、一定量までは低い税率(一次税率)による輸入を確保することによって需要者の要請に応じ、一定量を超える輸入分については、高い税率(二次税率)により輸入を抑制することによって、国内生産者を保護しようとするものである。

  2. 関税割当制度による一次税率の適用を受けて貨物を輸入しようとするときは、当該貨物の輸入申告の際、関税割当証明書を税関長に提出しなければならない。
    なお、輸入申告は、関税割当証明書の交付を受けた者の名をもってしなければならない。

  3. ミルク及びクリーム、ホエイ、チーズ、乾燥豆、とうもろこし、麦芽、でん粉、落花生、こんにゃく芋、糖みつ、ココアを含有する調製食料品、トマトピューレ及びトマトペースト、パイナップルの缶詰、調製食用脂、エチルアルコール、牛又は馬類の動物の革、羊革及びやぎ革、繭、履物のうちから三つをあげる。
【短 答 式】
第1問(関税法の用語の意義)
正 解



<解 説>
関税法の用語の意義に関する問題である。1は、関税法第2条第2項の規定により、本邦の船舶が外国の排他的経済水域の海域で採補した水産物は内国貨物である。2は、同法第2条第1項第3号の規定により、輸出の許可を受ける前の貨物は内国貨物である。3は、同法第2条第1項第3号の規定により、輸入の許可を受けた貨物は内国貨物である。5は、同法第74条の規定により、税関長が収容した外国貨物で、公売に付され買受人が買い受けたものについては内国貨物である。これに対し、4は、同法第74条及び同法施行令第64条の規定により、郵政官署からの交付の時をもって輸入があったものとされ、この場合は、交付前のものであることから、外国貨物である。

第2問(関税の確定及び納付)
正 解

○=2、4 ×=1、3、5

<解 説>
関税の確定及び納付に関する問題である。1は、関税法第12条第7項第1号の規定により、第9条の2(納期限の延長)の規定により納付すべき期限が延長された関税の法定納期限は当該延長された期限であることから、3は、同法第12条第7項第3号の規定により、同法第77条第5項の税関長の承認を受けて受け取られた郵便物につき納付すべき関税の法定納期限は、当該関税に係る第9条の3(納税の告知)の規定による納税告知書が発せられた日であることから、5は、同法第12条第7項第5号の規定により、関税定率法の規定により一定の事実が生じた場合に直ちに徴収するものとされている関税の法定納期限は、当該事実が生じた日であることから、いずれも誤った記述である。これに対し、2は、関税法第12条第7項第2号の規定により、4は、同法第12条第7項第4号の規定により、いずれも正しい記述である。

第3問(関税の徴収)
正 解



<解 説>
関税の徴収に関する問題である。1は、関税法第62条の15で準用する同法第45条第1項ただし書きの規定により、災害その他やむを得ない事情により亡失した場合は納税義務は免除されていることから、2は、同法第62条の4第1項の規定により、その性質又は形状に変更が加えられたときは、その使用状況の報告を求めることができるとされており、直ちに関税を徴収するとした規定はないことから、3は、同法第65条第1項の規定により、保税運送の承認を受けて運送された外国貨物が、その指定された運送の期間内に運送先に到着しないときは、運送の承認を受けた者から、直ちにその関税を徴収することから、4は、関税定率法第14条の規定に基づく無条件免税の場合は、いったん輸入の許可のときに関税の免除を受けて引取り、輸入の許可のときの関税免除について、無効または取消原因が生じない限り、関税が徴収されることがないことから、いずれも誤った記述である。これに対し、5は、関税定率法第15条第2項の規定により、正しい記述である。

第4問(輸出通関)
正 解

○=1、3 ×=2、4、5

<解 説>
輸出通関に関する問題である。1は、関税法第67条の2第1項の規定により、輸出申告は輸出しようとする貨物を保税地域に入れた後にするものとされていることから、3は、同法施行令第60条第1項第3号の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、2は、同法第2条第1項第4号の規定により、本邦の船舶が公海で採捕した水産物は内国貨物であり、同法第2条第1項第2号の規定により、当該内国貨物を外国に向けて送り出す行為は輸出に当たることから、4は、同法施行令第59条の2第3項及び関税定率法第4条の7第1項の規定により、外国通貨により表示された価格の本邦通貨への換算は、輸出貨物に係る輸出申告の日の属する週の前々週実勢外国為替相場の週間平均値によることとされていることから、5は、関税法第67条の規定により、輸出の許可を受けた貨物の全部について輸出を取りやめ国内に引き取るときは、輸入手続を必要とすることから、いずれも誤った記述である。

第5問(輸入通関)
正 解



<解 説>
輸入通関に関する問題である。1は、関税法第67条の2第2項の規定により、2は、同法第2条第1項第3号及び第67条の規定により、4は、同法第68条及び同法施行令第60条第3項の規定により、5は、同法第71条第2項の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、3は、同法第67条の規定により、貨物を輸入しようとする者は、当該貨物の品名並びに数量及び価格その他必要な事項を税関長に申告しなければならず、関税が無税のものについての除外規定はないことから、誤った記述である。

第6問(     )
正 解

イ=4 ロ=9 ハ=6 ニ=5 ホ=7

<解 説>
輸入通関に関する問題である。問題の文章は、関税法第67条及び第70条の規定に沿ったものであり、適宜正しい語句を選択する。

第7問(輸入通関)
正 解



<解 説>
輸入通関に関する問題である。2は、関税法第72条の規定により、3は、関税定率法第21条第1項第5号の規定により、4は、関税法施行令第59条の3第1項第3号の規定により、5は、コンテナーに関する通関条約及び国際道路運送手帳による担保の下で行う貨物の国際輸送に関する通関条約(TIR条約)の実施に伴う関税法等の特例に関する法律施行令第2条の規定により、それぞれ正しい記述である。これに対し、1は、関税法第73条第1項の規定により、輸入の許可前における貨物の引取りの承認申請は、その申請に係る貨物の輸入申告の後輸入の許可前に行うこととなっていることから、誤った記述である。

第8問(保税制度)
正 解

○=1、3 ×=2、4、5

<解 説>
保税制度に関する問題である。1は、関税法第32条の規定により、3は、同法第49条で準用する第40条の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、2は、同法第59条の規定により、保税作業に使用することができる内国貨物につき、外国貨物と同種であることの限定はないことから、4は、同法第33条及び第62条の3第4項の規定により、展示等を行うことにつき税関長の承認を得て保税展示場に入れられた外国貨物については、あらかじめ税関に届け出ることなく税関の執務時間外に内容の点検を行うことができることから、5は、同法第36条の規定により、保税地域以外の場所に置くことにつき税関長の許可を受けた外国貨物については、簡単な加工を行うことができないことから、いずれも誤った記述である。

第9問(貨物の運送)
正 解

A=3、4、5 B=1、2

<解 説>
貨物の運送に関する問題である。1は、関税法第63条第1項の規定により、2は、同法第63条第1項及び同法施行令第52条第1号の規定により、いずれも税関長の運送の承認を要しないものである。これに対し、3は、同法第2条第1項第3号及び第63条第1項の規定により、4は、同法第2条第1項第3号及び第4号並びに第66条第1項の規定により、5は、同法第63条第1項の規定により、いずれも税関長の運送の承認を要するものである。

第10問(関税の免税制度)
正 解

A=2、4、5 B=1、3

<解 説>
関税の免税制度に関する問題である。2は、関税定率法施行令第21条の2第2項の規定により、同法第15条第1項第5号の2ロに規定するその免除を受けようとする物品の出品者の名をもって輸入申告しなければならないとされている。4は、関税暫定措置法施行令第8条第2項の規定により、同法第4条に規定するその免除を受けようとする物品を使用する者の名をもって輸入申告しなければならないとされている。5は、関税暫定措置法施行令第12条で準用する同令第8条第2項の規定により、同法第5条に規定するその免税を受けようとする物品を使用する者の名をもって輸入申告しなければならないとされている。これに対し、1は、関税定率法第14条第10号の規定において、3は、関税定率法第17条第1項第5号の規定において、いずれも要件とされていないものである。

第11問(関税の軽減又は免除)
正 解

○=1、3、4 ×=2、5

<解 説>
関税の軽減又は免除に関する問題である。1は、関税定率法第10条第1項の規定により、3は、同法第13条第1項及び同法施行令第6条の2第1項の規定により、4は、同法第17条第2項で準用する同法第13条第3項の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、2は、関税定率法第11条の規定において、加工のためのものについての限定はあるが、修繕のためのものについては、本邦においてその修繕をすることが困難であると認められるものに限るとした規定はないことから、5は、関税暫定措置法第8条第1項及び同法施行令第44条第2項第2号の規定により、関税の軽減を受けることができることから、いずれも誤った記述である。

第12問(関税の戻し税)
正 解

○=1、3、5 ×=2、4

<解 説>
関税の戻し税に関する問題である。1は、関税定率法第10条第2項の規定により、3は、同法第19条の3及び同法施行令第54条の11第1項の規定により、5は、同法第20条の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、2は、同法第19条第1項の規定において、関税の払戻しを受ける場合、当該製品の輸出の時期に係る要件について特段の規程がないことから、4は、同法第20条第1項第1号の規定により、返送することがやむを得ない場合に限り関税の払戻しを受けることができることから、いずれも誤った記述である。

第13問(特恵原産地証明書)
正 解



<解 説>
特恵原産地証明書に関する問題である。1は、関税暫定措置法施行令第53条の規定により、特恵原産地証明書は、その発給の日から1年以上を経過したものであってはならないことから、2は、同令第50条第2項第1号の規定により、本邦から輸出された物品のみを原材料として特恵受益国で生産された物品は、当該国において完全に生産された物品とみなし、特恵原産地証明書が必要になることから、3は、同令第51条第3項の規定により、原産地の税関等が発給したものでなければならないとされていることから、5は、同令第52条及び特恵関税割当制度に関する政令第3条第1項の規定により、特恵原産地証明書を税関長に提出しなければならないとしていることから、いずれも誤った記述である。これに対し、4は、同令第51条第1項第1号の規程により正しい記述である。

第14問(課税価格の決定)
正 解

○=1、5 ×=2、3、4

<解 説>
課税価格の決定に関する問題である。1は、関税定率法第4条第1項の規定により、5は、同法第4条第1項第4号及び同法施行令第1条の5第3項の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、2は、同法第4条第1項第5号の規定により、輸入貨物の国内における再販売に係る収益で、売手に帰属するものとされているものは課税価格に算入されることから、3は、同法第4条第1項第2号ロの規定により、輸入貨物の通常の容器と同一の種類及び価値を有するものに限って課税価格に算入されることから、4は、同法第4条第1項第2号イの規定により、輸入取引に関し買手により負担されている買付手数料は課税価格に算入されないことから、いずれも誤った記述である。

第15問(課税価格の決定)
正 解



<解 説>
課税価格の決定に関する問題である。1は、関税定率法施行令第1条の4第1号の規定により、当該輸入貨物の輸入申告の時の属する日以後に行われる組立て又は整備に要する役務の費用が、現実支払価格に含まれない費用等に該当し、同法第4条第1項の規定により、輸入申告の日前に行われる組立て又は整備に要する役務の費用は、現実支払価格に含まれることとなる。これに対し、2は、同法施行令第1条の4第2号の規定により、3は、同法施行令第1条の4第3号の規定により、4は、同法第4条第1項の規定により、5は、同法施行令第1条の4第4号の規定により、いずれも買手により売手に対し又は売手のために輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に含まれない。

第16問(輸出貿易管理令)
正 解

○=2、4 ×=1、3、5

<解 説>
輸出貿易管理令に関する問題である。1は、輸出貿易管理令第4条第2項の規定により、永住の目的をもって出国する者がその引越貨物を輸出する場合は、通商産業大臣の輸出の承認は要しないことから、3は、同令第4条第1項の規定においては、国際郵便を利用して輸出する場合に通商産業大臣の許可を要しない旨の規定がないことから、5は、同令第4条第1項の規定においては、本邦から出国する者の携帯品に関し、通商産業大臣の許可を要しない旨の規定がないことから、いずれも誤った記述である。これに対し、2は、同令第2条第5項の規定により、4は、同令第2条第1項第3号及び同規則第3条の規定により、いずれも正しい記述である。

第17問(輸入貿易管理令)
正 解

○=3、4、5 ×=1、2

<解 説>
輸入貿易管理令に関する問題である。1は、同令第14条第1号、同令別表第1第1号及び告示の規定において、総価額が18万円の貨物であっても有償で輸入するものについては輸入の承認を要することから、2は、同令第3条第1項の規定に基づく輸入公表第3号7(2)の規定により、ワシントン条約附属書Uに掲げる種に属する動植物を輸入する場合、輸出国の管理当局が発給した輸出許可証又は再輸出証明書の原本を税関に提出すれば、通商産業大臣の輸入の承認を要しないことから、いずれも誤った記述である。これに対し、3は、同令第14条第1号及び同令別表第1第19号の規定により、4は、輸入貿易管理令第14条第1号及び同令別表第1第22号の規定により、5は、同令第14条第1号及び同令別表第1第17号の規定により、いずれも正しい記述である。

第18問(関税定率法別表の「関税率表の解釈に関する通則」)
正 解

C→E→D

<解 説>
関税定率法別表の「関税率表の解釈に関する通則」に関する問題である。輸入物品が2以上の構成要素から成り関税率表の2以上の項に該当すると認められる場合には、同通則3の規定により、最も特殊な限定をして記載している項が最優先で適用され、これによれない場合は、最も重要な特性を与えている構成要素から成る物品の所属する項に分類し、さらにこれらの方法によれない場合には、該当すると認められる項のうち最後の項に分類することとされている。

第19問(不服申立て)
正 解

○=1、2、3 ×=4、5

<解 説>
不服申立てに関する問題である。1は、関税法第89条第1項及び第2項の規定により、2は、同法第89条第3項の規定により、3は、同法第91条の規定により、いずれも正しい記述である。これに対し、4は、同法第93条の規定により、関税定率法第21条第3項の規定による通知の取消しの訴えは、当該通知についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができないことから、5は、同法第90条の規定により、関税法の規定による税関長の処分について、大蔵大臣に対し審査請求をすることができる期間は、当該処分に係る異議申立てについての決定があったことを知った日の翌日から起算して1月以内であることから、いずれも誤った記述である。

第20問(電子情報処理組織を使用して行うことができる手続等)
正 解

A=2、3 B=1、4、5

<解 説>
電子情報処理組織を使用して行うことができる手続等に関する問題である。1は、電子情報処理組織による税関手続の特例等に関する法律第3条第1項及び同法施行令第2条第7号の2の規定により、関税法第70条第1項の規定に基づく税関への証明は、輸入貨物に限られていることから、4及び5は、同法及び同法施行令において、規定されていないことから、いずれも電子情報処理組織を使用して行うことができないこととなっている。これに対し、2は、電子情報処理組織による税関手続の特例等に関する法律第3条第1項及び同法施行令第2条第7号の2の規定により、3は、同法第2条第2項及び同法施行令第1条第3号の規定により、いずれも行うことができることとなっている。



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