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トランプ政権初の通商政策アジェンダを発表(USTR)

●USTR

2017年3月1日、米通商代表部(USTR)はトランプ政権になって初めての通商方針となる「2017年通商政策アジェンダ」を発表しました。このアジェンダは米通商法に基づいて毎年3月1日までに議会に提出することが義務付けられているものです。通商代表に指名されているライトハイザー氏が上院での承認待ちのため、通商代表の正式就任後その意向によってはより詳細な内容が発表される可能性もあるとされています。

 

2017年通商政策アジェンダでは、まず昨年の大統領選挙で米国選挙民が示した意向に触れ、米国民はこれまで取ってきた通商政策に対して失望感を募らせているが、それは自由貿易、開かれた市場に失望したからではなく、国際貿易から目に見える恩恵を受けることができなかったからだとし、選挙民はトランプ政権に対して通商政策の方向を根本的に変え、新たなアプローチを求めていると述べています。その上で、今後取るべき通商政策上の措置は、米国民にとってより自由で、より公正なやり方で貿易を拡大することであり、今後の貿易上の措置はすべて米国の経済成長を高め、雇用を創出し、貿易相手国との相互主義を促進し、製造基盤、防御能力を強化し、農業やサービス業の輸出を拡大することを目指すものであるとしています。そのための方策として、基本的には多国間交渉によるのではなく、二国間での交渉に集中し、また米国の目標に合致していない通商協定については再交渉をし、その内容を改訂するとしています。同時に、米国の労働者等に対して不利益をもたらす外国の不公正な貿易慣行に対してこれを見て見ぬふりをすることはできないとも述べています。

 

以上の通商上の基本的な考え方を踏まえ、今後集中的に取り組む重要な目標として次の10項目があげられています。

 

①米国の労働者や事業者が、国内市場及び世界の主要な市場で公正な競争機会を与えられること

 

②農産品の輸出を含め、米国の輸出を阻害するような外国市場における不公正な貿易障壁を除去すること

 

③米国経済のあらゆる分野での利益に配慮したバランスのとれた政策をとること

 

④米国の知的財産の所有者がその知的財産を活用し、知的財産から利益を受けることができるようあらゆる面で公正な機会を確保すること

 

⑤米国の産業や労働者に被害をもたらすダンピング輸出や補助金を受けた輸出によって米国の市場が歪められることがないよう米国の通商上の法令を厳格に執行すること

 

⑥現行協定上の労働関係の規定を執行し、強制労働によって作られた物品の輸入や販売を禁止すること

 

⑦世界貿易機関(WTO)加盟国等が米国に認められている協定上の権利や利益を弱め、あるいは米国が負う協定上の義務を拡大するような協定解釈を行うことを認めないこと

 

⑧時勢の変化や市場の状況に対応できるよう必要に応じ現行の通商協定を改定すること

 

⑨米国の通商政策を、国家の安全を維持し、改善する上で必要となる経済力や製造基盤に資するものとすること

 

⑩国内及び外国の市場で米国の利益が可能な限り公正に扱われるようすべての米国の労働者、農業経営者、牧畜業者、サービス業者その他の事業者を強力に擁護すること

 

その上で、以上の米国の目標を達成するための最優先事項として次の4つの事項をあげています。

 

まず第1に「通商政策に関して米国の国家主権を守ること」があげられています。この関連で、特にWTOの紛争解決ルールが取り上げられ、同ルールの核を成すのはWTOの紛争解決に関する了解に規定されている「紛争解決機関の勧告及び裁定は、対象協定に定める権利及び義務に新たな権利及び義務を追加し、又は対象協定に定める権利及び義務を減ずることはできない」とされる規定であると述べ、米国が、WTOの紛争解決に関する了解を受け入れたのはこの規定があることによるもので、米国議会も米国はWTOの決定に直接従うことはないとしていることを想起すべきであるとし、WTOの紛争解決報告書において米国に不利な報告が出れば、国内法上USTRはその報告内容を履行すべきかどうか議会の関係委員会と協議し、履行するとされた場合にはその方法や履行期間について協議することとされているが、このことはWTOの報告は拘束性を有するものではなく、自動的に実施されるものではないことを示しているとしています。さらに米国の国内法ではウルグアイ・ラウンド協定のいかなる規定もその適用に関して「米国の法律に合致していなければ、効力を有するものではない」とも規定されていることを引用し、WTOの紛争解決機関が米国に不利な決定を下したとしてもそのような決定は自動的に米国の法律や慣行を変更させることにはならないとの米国の立場を説明しています。

 

2点目の最優先事項として「米国の通商関係法を厳格に執行すること」があげられています。米国の国内産業に被害をもたらすようなダンピング輸出や補助金を受けた輸出等に対する貿易救済措置はWTO協定を実施し、市場を歪めないためにもその基盤となるものであるとし、まずアンチダンピング関税や相殺関税の適用について触れています。さらに通商法のセーフガード規定(201条)に基づき、大統領は輸入の増大が国内産業への重大な被害の原因である場合には、救済措置を適用できることとなっており、この措置は、国内産業が競争力を高めるために輸入から一時的に救済する上で極めて重要なツールであると述べています。また通商法301条では外国の措置が国際貿易協定に違反し、不当で、合理性がなく、あるいは差別的なもので、米国の貿易を制限する場合には、USTRは適当な措置をとることができることとなっていると述べ、この301条を適切に活用すれば、外国がより市場を重視した政策をとるよう導くための強力な梃子として機能することとなるとして301条の活用の必要性を強調しています。さらに、主要な外国市場は政府の補助金、知的財産の窃取、為替操作、国有企業による不公正な競争、労働法の違反、強制労働の使用その他多くの不公正な慣行によって歪められている現象が見られると述べ、米国の労働者等に被害を及ぼすような不公正な貿易上の慣行は許容できず、このような慣行は市場を歪め、資源の最適配分を妨げ、そのため米国民の生活水準が低下し、成長しようとする経済活動の芽が摘まれることになるとしています。その上でWTOが不公正な貿易慣行に対して有効に機能しなければ、貿易システムへの信頼が揺らぎ、このような事態は健全な世界経済のためにはならず、真の市場競争が行われるよう積極的に対応すると述べています。

 

3点目には「他の国が米国の物品やサービスの輸出に対し、その市場を開放するよう、また米国の知的財産権の適正で、効果的な保護及び権利行使を行うことができるようあらゆる手段を用いること」があげられています。現状を見ると、米国の輸出は多くの市場において重大な障壁に直面しており、その例として高関税や非関税障壁、デジタルデータやサービスの流入の不当な制限、トレードシークレット(営業秘密)の窃取、さらには不必要な規制等による技術的障壁、為替操作等をあげています。そして米国は長い間外国での公正な競争機会を与えられてこなかったこともあり、外国において多くの活動が阻害されてきたと述べ、取り組むべき課題として自由市場原理の確立と貿易制度面の透明性の確保を2つの根本的な課題としてあげています。

 

最後の4点目として「主要国とは新規の、より良い通商協定を交渉すること」があげられています。1980年代後半以降、米国は北米自由貿易協定(NAFTA)、WTOを創設したウルグアイ・ラウンドの諸協定、2001年の中国のWTO加盟議定書並びに一連の通商協定を締結し、これによって特に輸出機会の拡大という形で実質的な利益がもたらされたが、中国がWTOに加盟した前年の2000年以降GDPの伸びは鈍化し、雇用機会が弱まり、米国の製造業の雇用に至っては大幅に減少する事態を迎えることとなったとし、これには2008年~2009年の金融危機やオートメ化による影響等多くの要因があげられるとしつつも、中国のWTO加盟による影響として、米国の物品やサービスの貿易赤字額の拡大、米国の中間層の年収の減少、米国の製造業の雇用数の減少、米国の製造業の生産の鈍化等をあげ、現行の貿易ルールは中国にとっては好ましいものではあっても、今世紀に入ってからの米国にとってはそうとは言えないとして、中国に対して厳しい見方を打ち出しています。さらに他の通商協定にも言及し、NAFTA締約国であるカナダ及びメキシコとは、何年間にもわたり物品の貿易は赤字続きであることや、韓国とのFTAについても米国の物品の貿易収支は赤字を拡大しているとしています。そして通商協定に対するアプローチを考え直す時期に来ていることがはっきりしているとし、二国間の交渉に集中的に取り組み、高い基準の公正性を貿易相手国と共有することとなろうとし、また、不公正な活動を続ける貿易相手国に対しては、あらゆる法的措置を躊躇なく取る方針であると述べています。

 

以上の目標等のため、トランプ政権になって環太平洋パートナーシップ(TPP)協定から離脱したことに示されている通り、新たなアプローチをすでに具体化させていること、大統領は議会と将来の通商協定に関する協議を開始していること、また米国の国家主権を防衛し、米国の通商法を執行し、外国の市場開放に向けて取り組むため強力なチームを結成したことを明らかにし、近い将来あらゆる面でより活発に活動することになろうと述べています。

そして最後に、20年間以上にわたり、米国政府は様々な多国間、二国間等の協定を通じて外国の貿易慣行の是正に取り組み、また国際的な紛争解決メカニズムを尊重してきたが、期待に反して米国が世界の市場で不公正で、不利な立場に置かれていることがあまりにも多いとし、このことは米国の主権を守り、米国の通商法を執行し、海外の市場の開放をはかり、新たな通商協定を交渉する新たな通商政策を取るべきときに至ったことを示すものであるとしています。

 

(出典:2017年3月1日USTR発表の「2017年通商政策アジェンダ」より)