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貿易円滑化協定が発効(WTO)

●WTO

2017年2月22日、世界貿易機関(WTO)は、「貿易円滑化協定」が同日発効したことを発表しました。この協定はWTO発足21年目で初めて締結された多角的な取決めとなります。同日、ルワンダ、オマーン、チャド及びヨルダンが協定の受諾書をWTO事務局に提出したことにより、受諾国の数が112か国・地域となり、協定の発効要件とされるWTO加盟国(164か国)の3分の2(110か国)を超えることとなりました。協定を受諾した国には、日本、欧州連合、米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、インド、中国、台湾、韓国、ロシア、ブラジル、メキシコ、アセアン諸国等をはじめ、多くの開発途上国や後発開発途上国が含まれます。

 

貿易円滑化の問題は、2001年にドーハで開催された閣僚会議において採択されたドーハ・ラウンド交渉の一分野とされていたもので、2004年に協定案作成のための交渉が開始され、2013年のバリでの第9回閣僚会議において「貿易円滑化協定」として合意されましたが、貿易円滑化協定、食糧安全保障のための公的備蓄、ドーハ・ラウンドの今後の作業計画等を含むバリ・パッケージに対して一部の国が反対したため、その採択が遅れることとなりました。その後2014年11月27日のWTO一般理事会においてバリ・パッケージが採択され、貿易円滑化協定については各加盟国による国内手続を経て、2017年2月22日発効要件が満たされる運びとなったものです。

 

貿易円滑化協定(以下「TFA」)は、国境を越えて取引される貨物の迅速な移動、引取り及び通関手続を確保し、そのための改革を締約国に促すことを内容とし、多角的な貿易システムを通じた貿易の活性化を図るためのものとされています。WTOの分析によればTFAが完全実施された場合のメリットとして、加盟国の貿易に伴うコストが14.3%削減され、開発途上国がその最も大きな恩恵を享受することやこの協定によって貨物の輸入に要する日数は1.5日程度、輸出については2日程度が短縮され、その結果輸入と輸出に要する時間は、それぞれ47%、91%程度短縮されること等が挙げられています。さらに、WTO事務局は、TFAの実施に伴って、新たな企業による輸出が増え、特に開発途上国については新たな輸出品目が20%余り増え、また後発開発途上国については35%拡大することになろうとの分析結果も紹介しています。

 

アゼべドWTO事務局長は、TFAは貿易面での改革を図る記念碑的なものであるとしてこれを歓迎する談話を発表し、その中で今回の協定発効に伴う大きな利点として、多角的貿易システムへの加盟国のコミットメントの表れであること、そしてTFAの実施に伴いすべての国において貿易コストが削減され、それを実現するために相対的に貧しい国に対して技術協力が開始されることになることをあげ、さらに「これによって、世界の貿易は年間1兆ドル相当の拡大が図られ、相対的に貧しい国にその最大の恩恵がもたらされることとなる。これによる効果は現行の関税をすべて撤廃するよりも大きなものとなろう」と述べています。そして、協定の発効は出発点にすぎず、協定がもたらす恩恵を現実のものとするための責任を果たすことが必要となると述べ、今後の完全実施に対して大きな期待を表明しています。

 

欧州委員会も、2月22日TFAの発効に際してコメントを出し、その中で、TFAは国際的な輸出入手続、通関手続さらには貨物の通過手続を簡素化し、明瞭なものとすることを狙いとするもので、このような措置を通じてグローバルな経済成長を高めることになる。欧州連合の税関当局は協定内容の実施を牽引する役目を果たし、国際的なレベルでの貿易の促進のためのエンジンとしての役割を果たすとしています。欧州委員会の通商担当のマルムストロム委員は、国境手続の改善やより迅速で、より円滑な貿易の流れによってグローバルなレベルで貿易を再活性化させることとなり、特に、煩瑣な手続や複雑なルールをクリアする上で日々厳しい状況に置かれていた小規模な企業にとっては大きな朗報となろうと述べています。また、欧州委員会の国際協力・開発担当のミミツァ委員はこの協定のもたらす恩恵を最大限活用するために貿易パートナに対して積極的に支援するとの意向を表明しました。欧州連合は開発途上国への支援のため4億ユーロを支出することをすでに約束しています。

 

TFAの大きな特徴は、開発途上の加盟国及び後発開発途上の加盟国は、協定に規定された様々な措置についての実施能力に応じて自らその実施のタイムテーブルを設定することができるように工夫されていることです。そして、開発途上及び後発開発途上の加盟国がTFAのもたらす恩恵を完全な形で享受するために協定の完全実施を支援するためのファシリティ(TEA F)が、これらの国々からの要請に基づいて設けられています。

 

協定では、先進国については、貿易促進措置として規定されている12か条にわたる措置を直ちに実施することが義務とされていますが、開発途上国については直ちに実施する措置として自ら指定した措置については直ちに実施する必要がありますが、それ以外の措置についてはその実施時期を明示し、これを実施するために必要とされる能力開発の支援の必要性について通報することが求められます。また、後発開発途上国については、実施についてのより長期の移行期間が設けられ、必要とされる技術支援についても通報する必要があります。

 

協定で規定されている主な措置には次のものが含まれます。

 

この協定はその前文に謳われているとおり、貨物(通過貨物を含む。)の移動、引取り及び通関を一層迅速に行うためのものですが、開発途上加盟国、特に後発開発途上加盟国の特別のニーズを勘案し、この分野における能力の開発のための援助及び支援を強化する措置が設けられ、協定上の措置の履行と加盟国の能力をリンクさせる内容のものとなっています。

 

協定内容は大きく2つの部分に分かれ、まず、加盟国全体に適用される規定として、通関手続等の迅速化のための様々な措置が規定されています。具体的には①輸入・輸出・通過の手続等に関する情報の公表、②貿易業者等に対する貨物の移動・引取り・通関に関する法令の改正等についての意見表明の機会の提供、③関税分類や原産地等について書面による要請があった場合の拘束力のある事前教示、④税関は行政上の決定に対して出された異議申立て、審査請求を無差別な態様で認めること、⑤輸出入に伴う手数料等に関する規律、⑥貨物の引取りに関しては、迅速な引取りのため貨物の到着前の輸入書類等の事前提出、関税等の電子的な納付、関税等の確定前の貨物の引取り、リスク管理手法による税関の貨物管理、貨物の引取りの迅速化のための通関後の事後監査制度、認定事業者のための書類やデータ等の要求の緩和、急送貨物の迅速な引取りのための手続の採用、腐敗しやすい貨物の執務時間外での引取り等、⑦貿易円滑化のための国境機関間での協力、⑧貨物の荷揚げ地と通関等の場所が異なる場合の税関管理下での貨物の移動、⑨輸入、輸出及び通過に関連する手続としては、輸出入・通過の方式・手続に関する国際的な基準の採用、貨物の輸出入や通過のための書類やデータの提出の単一の窓口の設置(シングルウインドウ)、関税分類や関税評価に関する船積み前検査の要件化の禁止、⑩輸出入申告の内容について疑義がある場合の税関間の協力、等の措置が規定されています。

 

この協定のもう一方の柱として、開発途上及び後発開発途上の加盟国に対する特別待遇の規定が設けられています。開発途上及び後発開発途上の加盟国もこの協定に規定されている様々な措置を実施することが義務付けられますが、これらの加盟国については協定を実施するうえで能力の開発のための援助や支援が必要な場合があり、そのため必要な範囲で援助や支援が供与されることが規定されています。これらの加盟国については実施の態様が区分化され、それぞれの加盟国が自ら選択した区分に従って、協定発効時に実施する措置、1年後に実施する措置、一定の移行期間経過後に実施する措置、さらには能力開発のための支援等が供与された後に実施する措置等を決め、自ら選択した内容を、この協定に基づき設置される委員会(「貿易の円滑化に関する委員会」に通報する必要があります。この能力開発のための援助及び支援の提供については、二国間ベース又は適当な国際機関を通じて、支援等を受ける国と合意した条件で実施されることが定められています。

 

(2017年2月22日付けのWTO事務局のプレスリリース及び貿易円滑化協定、欧州委員会プレスリリース等より)