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中国の「市場経済国」としての認定を巡り協議を開始―ダンピング防止措置の適用問題―(EU)

●EU

2016年2月2日付けの欧州委員会のプレスリリースによれば、中国からの輸入品に対するダンピング防止関税等の措置の適用方式を巡り欧州連合(EU)の域内での協議が開始されることとなりました。

 

この問題は、中国からの輸入品についてダンピング調査を行う上で同国を「市場経済国」として認定するかどうかに係わるもので、中国が2001年12月に世界貿易機関(WTO)に加盟するに際して、ダンピング措置を適用するかどうかを決定する際の価格差の算定方法について中国を「非市場経済国」として、「市場経済国」の場合とは異なる方式を認める時限的な取り決め(加盟議定書に含まれる規定)を結んだことに端を発しています。この取り決めは、中国のWTO加盟後15年間有効とされ、2016年12月11日に失効するため、欧州委員会はこれが失効した場合にどう対処するかに関して、欧州連合の経済面、特に雇用面に及ぼす影響を見極めたうえで対処する必要があるとして今回の協議に至ったと説明されています。

 

WTOのルールでは、第三国からの輸入品が欧州連合の産業に損害をもたらすような不当に安い価格で輸入された場合には、通常課される関税とは別に、ダンピング防止関税を課すことができると定められています。この不当に安い価格を算定するに当たって、WTOのルールでは欧州連合への輸出価格と輸出国の国内価格または同国での生産コストを比較して算定するとされていますが、市場経済が浸透しておらず、市場の条件が異なる国については、別の扱いが認められ、このような国の国内価格や生産コストは輸出価格との比較においては使われず、それに代わって別の「市場経済国」での価格を価格差の算定に使うことが認められています。その理由は「非市場経済国」では経済に対する国の影響が大きく、国内価格が人為的に低く抑えられ、そのため算定の基礎としては適切とはみなされないためです。

 

中国経済では、様々な歪曲的な措置が適用されているため、国内の価格や生産コスト等は正常な市場の力を反映するものではないとされ、そのため中国のWTOへの加盟議定書において「非市場経済国」としての基準がダンピング手続き上適用されています。欧州連合においては、例外なくこれまで中国からの輸入品のダンピング調査ではこの基準を適用して中国以外の「市場経済国」の価格やコストを参考にしたとされています。

 

欧州委員会は、欧州議会や理事会への説明ペーパーの中で、2016年12月の失効後の対応として次の3つの選択肢を示しています。
① 現行の欧州連合の規定を維持し、中国を「非市場経済国」として扱う。
② ダンピング調査についての現行の方式を変え、中国を「市場経済国」として扱う。
③ 中国を「非市場経済国」のリストから外すが、同時に欧州連合の法規定を強化し、将来発生するケースに対してもこれまで同様に効果的に対応できるように措置を取る。

 

①に関しては、欧州連合はWTOのルールに違反することとなり、補償的な措置が求められるおそれが生じるとされています。

 

②に関しては、欧州連合加盟諸国の経済への影響、特に雇用への影響が問題とされます。同ペーパーには雇用への影響に関していくつかの試算が紹介されていますが、その中で中国を「市場経済国」とした場合の雇用への長期的な影響として、最大で21万1千人の雇用が喪失するとして次のように試算されています。
・直接的な影響:-188,300人
・間接的なアップストリームへの影響:-53,100人
・間接的なダウンストリームへの影響:+30,400人
・全体への影響:-211,000人
(マイナスは減、プラスは増を示す)

 

③に関しては、この措置の究極的な目標は、WTOやEUの枠内において、輸出国市場で歪曲的な措置が発見された場合これを是正することを可能とするもので、これによって同一の競争条件を維持して経済的な実態を反映する形でダンピング防止税を課すことであると説明されています。ただし、具体的な措置の内容については今後の検討課題とされています。

 

なお、欧州連合の適用しているダンピング防止措置は、中国からの輸入品に対しては52件(2015年末現在)に上っていること、この措置によって影響を受けている輸入額の比率は中国からの輸入額の1.38%に相当すること、またその対象とされている物品の種類は、化学品(14件)と鉄鋼製品(13件)等であることが説明されています。また、ダンピング防止措置の直接の対象とされる業界の雇用者数は約25万人で、中国に対して適用されているダンピング防止措置に関係する雇用者数はその90%に相当する234,300人とされています。

 

今後の検討の進め方について、欧州委員会は今後詳細な影響調査を行い、その調査結果や欧州議会及び理事会から出される意見等を踏まえて今年7月には本件を再度取り上げることになろうと述べています。

 

(「非市場経済国」の指定はWTOでは決まったルールがなく、それぞれの加盟国の国内ルールを適用して個々に指定しています。欧州連合が「非市場経済国」として指定している国には、中国のほか、ベトナム、カザフスタン、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、北朝鮮、カザフスタン、モルドバ、モンゴル、タジキスタン、トルクメニスタン、及びウズベキスタンが含まれます。)

 

(出典:2016年2月2日付けの欧州委員会のプレスリリース等より)