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第10回WTO閣僚会議で農産品への輸出補助金の撤廃等について合意(WTO)

●WTO

2015年12月15日からケニアの首都ナイロビで開催されていた世界貿易機関(WTO)の第10回閣僚会議は同月19日に一連の貿易上の措置を含む「ナイロビ・パッケージ」を採択して閉会しました。この閣僚会議は、WTOの最高意思決定機関で、アフリカでの開催は今回がはじめてです。

「ナイロビ・パッケージ」は、農業、綿花、その他後発開発途上国(LDC)に関連した課題等6つの閣僚決定を含むものです。

 

このパッケージの中核は、アゼベドWTO事務局長が、WTOの20年間の歴史の中で「農業に関する最も重要な成果」であるとして高く評価した農産品への輸出補助金の撤廃を定めた約束とされています。現在多くの国では農産品の輸出を支援するために輸出補助金が使われていますが、今回決定された補助金の撤廃は法的な拘束力を伴う決定で、貿易歪曲的な効果があるとされる輸出支持措置は将来にわたってこの決定に拘束されることとなります。今回の決定では、先進国については一部の例外品目を除き即時に補助金を撤廃すること、途上国については2018年までに撤廃することとなっていますが、農産品輸出に係わる一部の措置(流通や輸送コスト等)については弾力的な扱いとされ、2023年までは限定的に補助金が認められます。また、最貧国については更なる猶予期間が認められます。また、補助金以外の輸出政策が補助金の隠れ蓑として使われないよう一定の規律が設けられ、さらに農産品輸出者に対する金融面での支援措置に係る制限や農産品貿易に関係する国家企業に関するルール、食糧援助が国内生産に対してマイナスの影響を及ぼさないよう確保するための規律等も設けられています。

 

「食糧安全保障のための公的備蓄」に関しては、加盟国は今後この問題を建設的に検討して恒久的な解決策を見出すこととなりました。2013年に開催された第9回閣僚会議(バリ島)では、途上国は2017年の第11回閣僚会議まではこのような備蓄政策を継続することが認められています。

 

「途上国のための特別セーフガード・メカニズム(SSM)」に関しては、途上国は輸入急増に直面したような場合にこのメカニズムを使って一時的に関税を引き上げる権利を有するとされ、今後WTO農業委員会でこの問題に特化した会合を開き、具体策の検討を継続することとされました。

 

「綿花」に関する閣僚決定では、LDCにとってのこの分野の死活的な重要性が強調され、マーケットアクセス、国内支持措置及び輸出競争の3分野を中心に決定されました。マーケットアクセスに関しては、2016年1月1日からはLDCから輸出される綿花に対して先進国は関税を無税とすると共に、割当枠を設けてはならないとされ、また途上国の中でこのような措置の導入が可能な国も先進国と同じような対応を求めるとされました。国内支持措置に関しては、綿花政策面での国内改革の必要性が強調され、更なる努力が必要であること、また綿花の輸出競争に関しては、先進国は綿花への輸出補助金を直ちに撤廃し、また途上国についても一定に時期までに撤廃することが求められることとなりました。

 

後発開発途上国(LDC)のための措置に関しては、LDCのための特恵原産地ルールについての決定とLDCのサービス提供者への特恵待遇についての決定が含まれます。LDCへの特恵原産地ルールに関しては、LDCに対して一方的に供与される特恵措置に関連して先進国、途上国がLDCの輸出を円滑化するため、前回2013年のバリ島での閣僚決定を踏まえ、「LDC産品」としての資格決定の方法や、LDCが輸入した原材料等を使って輸出品を製造した場合、このような輸入原材料等の使用分も自国産として認める「累積原産地」ルールを認めようとするもので、LDCが最終製品の75%までは非原産品の使用を認めるよう特恵供与国に求める内容となっています。また、原産地に関する書類や手続要件等について簡素化を検討するよう特恵供与国に求めるとされました。

 

LDCのサービス貿易に関する決定では、「サービス貿易に関する一般協定(GATS)」の下でLDCに供与されている特恵待遇をさらに15年間延長し、2030年末まで認められることとなりました。この措置は、同協定上の最恵国待遇(MFN)の義務からの逸脱を認めるもので、現在21か国がこのような逸脱の免除を認めています。

今回の閣僚会議では、グローバルな貿易面でWTOが果たす役割と共に、ドーハラウンドの今後の扱いについても討議されました。

 

前者については、採択されたナイロビ宣言の中で、「ルールセッティング及びガバナンスについては、WTOはグローバルなフォーラムとして傑出」した存在であるとされ、WTOのルールに基づいた多角的貿易システムがグローバル経済に果たしている貢献に関しては加盟国間での認識は共有され、また地域的な通商協定(RTA)は多角的貿易システムを補完するもので、多角的貿易システムに代わるものではないことが確認されました。

 

ドーハラウンドを今後どう扱うかについては、閣僚宣言では残されているドーハラウンドの課題について交渉を前進させるとの全加盟国の約束が明記され、開発問題が今後の作業の中核となるものであり、特別且つ優遇的な扱いの供与はその不可分の一体となるものであることが再確認されたとされています。しかしながら、同時に閣僚宣言では「閣僚は、また、交渉者は成果が達成されていない作業分野を優先的に取り上げるべきであるとする一方、一部の閣僚は交渉のための別の課題を見出し、審議するよう求めたが、他の閣僚はこれに同意せず相反する意見が表明された。このような別の課題について多角的な交渉を開始するための決定は全加盟国の同意が必要となる」とされ、ドーハラウンドの今後の扱い、将来のWTOの課題等については加盟国間で意見が一致せず、両論が併記される形となりました。

 

(出典:2015年12月19日付けのWTOのプレスリリースより)