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TPP交渉を後押しする貿易促進権限(TPA)法が成立(White House)

●White House

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)等、米政府が現在進めている通商交渉に不可欠とされる大統領(米政府)への通商協定交渉権限を付与すること等を内容とする貿易促進権限(TPA)法案が米国の上下両院での可決を経て、2015年6月29日オバマ大統領がその法案に署名し成立しました。また、TPP等の通商協定の実施後の国内対応策として雇用等を支援するための貿易調整援助法(TAA)についても議会で可決され、大統領が署名して成立しています。

 

大統領への通商上の交渉権限を授権する今回の法律の名称は「The Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015(2015年の超党派議員による通商上の優先事項と説明責任に関する法律)」で、この法律では、一方で通商協定の交渉上の権限を大統領に付与するとともに、他方では大統領の議会等への説明責任を規定しています。したがって、今後締結される通商協定は、この法律に定められた目標、政策、優先度にしたがって進められ、この権限に基づいて米国政府が交渉し、成立した通商協定については、議会はその内容について修正することなく、これを一括して承認するかしないかを決定することとなり、今後の通商協定の締結交渉の加速に大きく貢献するものとされています。また、同時に説明責任との関係で、大統領は議会と定期的に協議し、議会との協議が行われなかった場合には通商協定の締結を議会が阻止することもあり得ることとなります。

 

米国に特有とされるこのような通商協定交渉権限の大統領への付与の背景には、合衆国憲法において国際通商を規制する権限を議会に認めていることにあります。そのため1930年央までは議会が個々の品目について関税率を検討し、立法措置をとって関税率がその都度設定されていましたが、その後諸外国との相互主義に基づく関税交渉の時代に入り、さらに関税にとどまらず非関税障壁に関する交渉も相互主義に基づき諸外国と行われるようになり、一定の制約のもとに大統領に対してまず相互主義に基づく諸外国との関税交渉権限が付与され、その後このような権限の中に非関税障壁に関する権限も含められるようになってきたという経緯があります。

 

今回成立したTPAは、大統領が2018年7月1日以前(ただし、2021年7月1日までの延長の可能性があります。)に締結する国際通商協定について授権するものです。この権限の対象とされるのは、現在交渉中の日本を含む環太平洋12か国間でのTPP交渉、欧州連合との環大西洋貿易投資パートナーシップ協定(T-TIP)交渉、世界貿易機関(WTO)のサービス貿易協定(GATS)の対象範囲を拡大するための一部のWTO加盟国との交渉(TISA)、一部のWTO加盟国間で行われている環境物品協定(EGA)交渉等があげられますが、それ以外にも、WTOのドーハ・ラウンド交渉の結果協定が成立する場合等2018年7月1日又は2021年7月1日(延長された場合)までに締結される通商協定も含まれます。

 

TPAでは、包括的な通商交渉の目標として米国の貿易を不当に制限等している既存の関税や非関税障壁の軽減・撤廃があげられ、具体的な目標として、開放的で、公正且つ相互主義による市場アクセス、貿易障壁や貿易歪曲措置の軽減・撤廃、紛争解決を含む国際通商や投資上の規律・手続の強化、米国の国際競争力の強化、環境の保護、国際的な労働基準に合致した労働者や児童の権利の保護、小企業の国際市場へのアクセスの改善等があげられ、また交渉分野としては、物品およびサービス、農業、外国投資、知的財産、デジタル製品やサービス及び国境を越えるデータフロー、規制上の慣行、国家所有企業・国家管理企業、現地化による貿易障害、労働及び環境、通貨、WTOと多角的貿易協定、透明性、腐敗行為、紛争解決と権利行使等の多くの項目があげられています。

 

なお、通商協定の実施に関連して、大統領から議会への通報や議会との協議が一定の期限までに行われなかった場合に加え、人身売買(人身取引)をなくすための最低限の基準を満たさず、それを遵守するための努力もしていないとされる国(2014年の米国務省発表の人身取引報告書では最低ランクのTier 3の国として分類されている国で、23か国があげられていますが、この中にはTPP交渉参加国のマレーシアが含まれています。)との協定を実施する法案は授権の範囲から除かれています。

 

オバマ大統領は、法案への署名に先立つスピーチの中で、今回の法案によって付与されることとなる通商上の権限は、これまでの通商協定に見られない高い基準と厳しい保護を定めた21世紀タイプの新しい通商協定の成立を後押しするものであるとし、その一例としてTPPを取り上げ、TPPにおいては労働者や環境に対する強力な保護を行う規定が含まれ、またこれまでの協定とは異なり相手国に対してその実施を求めることができる点をあげています。そして米国はすでに高い基準を満たしており、諸外国の基準を米国並みに引き上げ、これによって諸外国と同等の競争条件を確立することになると述べています。また、同時にTPAが成立したからといって現実に通商協定が成立するわけではなく、今後厳しい交渉が待ち構えていることを強調するとともに、国民の透明性の欠如に対する懸念を払しょくするためにも協定内容をウェブ上に掲載し、協定の内容を国民が検討する機会を提供するとも述べています。

 

また、USTRのフロマン代表は、TPA法案が両院で可決されたことを受けて6月23日声明を発表し、その中で通商上のルールを確立するうえで今回の法案の成立は米国がそのリーダーシップをとることを支持するものであり、TPPやT-TIP等今後の通商協定締結交渉において米国は声を一つにして臨むことができると述べるとともに、これまでに例のない透明性や協議についての要件が設けられたことにも触れ、今後引き続き議会と緊密に協議して今後の作業を進めて行きたいと述べています。

 

(出典:2015年6月29日付けのホワイトハウスのプレスリリース、6月23日付けのUSTRのプレスリリース、米上院のリポート等より)