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オバマ政権の2015年通商政策アジェンダを発表(USTR)

●USTR

2015年3月4日、米通商代表部(USTR)は2015年のオバマ政権の通商政策の方針をまとめた2015年通商政策アジェンダ(2015 Trade Policy Agenda)を発表しました。これは米通商法に基づき毎年この時期に議会等に提出されるもので、同アジェンダは、2014年の通商協定に関する年次報告と併せて発表されています。

 

今回のアジェンダでは、米国経済にとっての通商の果たす役割の重要性として、昨年1年間の輸出額が記録的な規模(2.35兆ドル)に達したこと、この輸出は1,170万人の雇用を支えていること、このような輸出増に助けられ、財政面の赤字も1940年代以降では最も早いペースで減少に向かっていること等が指摘されています。

 

通商政策については、米国の労働者を保護し、雇用機会を創出することが重要であるとして、そのために公正で、均等な条件下での競争機会を確保するためのルール作りを牽引するとし、米国市場は世界で最も開放された市場のひとつであり、関税率は平均で1.5%以下と低く、物品やサービスの米国への輸出を阻害するような非関税障壁も設けられていない一方で、諸外国では高関税率が維持され、米国の産品を差別的に扱う非関税障壁が設けられ、さらには不公正な補助金の支給や環境問題や労働者の権利についての配慮も十分でないため、米国以外の国、地域の消費者の95%は米国の生産者から隔離された状態に置かれており、米国は通商協定の締結を通じてこれらの市場を開放し、米国の労働者にその恩恵をもたらす必要があるとしています。そして、米国のこれまでの歴史に照らしても、米国はルール作りを他の国に任せて、ただ受け身の姿勢を取ることはなく、ルール作りに積極的に関与し、率先して取り組むとして、環太平洋経済連携協定(TPP)や環大西洋貿易投資パートナーシップ(T-TIP)等のルール作りに対する強い意欲を前面に押し出しています。

 

通商戦略上の目標についての記述では、世界において米国のパワー、影響力を高めるためには、米国経済を強くすることであり、通商政策はこの目的に資するものであるとし、①米国のパートナーや同盟国の強化、②通商ルールの確立と権利行使、③広範で包括的な開発の促進、の3点をあげています。

 

そして、以上の戦略的な目標を達成するため、環太平洋経済連携協定(TPP)や環大西洋貿易投資パートナーシップ(T-TIP)等の締結の重要性、さらにはアフリカ成長機会法(AGOA)に言及し、2015年においては、2014年の成果であるTPPやT-TIPの交渉、さらには世界貿易機関(WTO)で成立した貿易円滑化協定(TFA)の実施、情報技術協定(ITA)に基づく関税無税品目の拡大交渉をさらに進めるとしています。以上のほか、環境物品協定(EGA)も13か国間で交渉が再開されたことにも触れています。その上で2015年を展望して、TPPの交渉は終結することが見込まれること、T-TIPの交渉は大幅に前進すること、さらにはサービス貿易協定(TiSA)の交渉は進展し、AGOAについても議会と共働して更新することとなろうとし、さらにWTOの多角的貿易システムを強化し、ITAやEGAの交渉等、この1年間は歴史的な年になろうと述べています。

 

さらに、このような交渉での米国の立場を強くし、米国の目標を実現するためにも、デジタル経済等の新しい状況を踏まえた新たな貿易促進権限(TPA)の承認が極めて重要であり、そのためオバマ大統領は議会に対してこの承認を求めているところであるとしています。

 

通商政策を進める上での優先事項として、①基準が高く、雇用を支える通商協定、②通商上の権利の行使、③世界レベルでの米国のパートナーとの通商関係及び投資関係の強化、④通商と開発を通じての貧困との闘い、グローバルな経済成長の達成、⑤一般国民への情報提供と多様な観点に配慮したバランスのとれた通商政策の策定、の5項目があげられています。

 

通商協定の重要性に関連して、これまでに締結された自由貿易協定(FTA)の効果に言及し、FTA当事国との間での貿易額の増加はそれ以外の国を大きく凌駕しており、過去5年間の統計を見るとFTAを締結した国への輸出額は64%を超える増加となったのに対して、FTAを結んでいない国への輸出額は45%増程度にとどまっているとしています。さらに、米国の貿易赤字はいまだ続いているものの、FTAを結んだ20か国を合せると、物品とサービスを併せた貿易は黒字を計上しているとし、貿易赤字は2006年に比べると3分の1にまで縮小したが、この赤字はFTAを締結していない国との貿易収支によるところが大きいと結んでいます。また、米国の関税率は低く、非関税障壁も設けておらず、このため諸外国との間には米国に不利に働くような大きなインバランスがあり、通商協定の締結は米国以外の国の通商上の障壁を米国以上に引き下げることとなり、これによって米国の輸出機会が増え、雇用機会の創出につながるとも説明しています。

 

なかでもTPP等の通商協定の締結について重点的に記述され、通商協定で求める内容として、労働者の権利、環境問題への取組、知的財産等に関連したイノベーションと創造等があげられ、そのための通商協定としてTPP、T-TIP、ITAやサービス貿易協定(TiSA)、さらにはWTOの協定等が取り上げられています。

 

このうち、労働者の権利に関しては、これまでの通商協定では二次的な扱いとされていたがこれを新たな形で通商協定に取り込み、均等な競争条件を確保し、相手国の中所得層の育成を図り、通商の拡大につなげる必要があると述べ、通商協定の中に労働権の尊重と保護を取り込むこと、その例示としてTPPをあげ、その中において権利行使可能な労働権を最大限拡大するようこれまでにない交渉を行っていると述べ、労働権を侵害した場合、協定上の他の侵害行為と同じように強力な紛争解決メカニズムの下に置くよう求めること、特に、一部のTPP交渉参加国はその国内法の改正や国内慣行の是正を行って国際労働機関(ILO)の基本的な労働権と合致させる必要があること、この中には、団結権、団体交渉権、児童労働や強制労働、雇用上の差別等からの保護を含み、また、最低賃金、労働時間、安全性や健康といった要件等についても交渉していると述べています。

 

また、北米自由貿易協定(NATA)等の既存の協定についても再交渉をし、ILOの基準が遵守されるよう実現を図るとしています。

 

通商協定と環境問題との関係については、世界で最も高い基準を設定し、この分野でも、他の通商上の義務と同じように権利行使が完全にできるようにすること、特に、TPPについては、その核を構成するものであり、野生動物等の密輸、森林資源の保全等をも取り込むと述べています。さらに、WTOでは今年は環境物品協定(EGA)の交渉を通じて環境物品の関税の撤廃を引き続き求めるとしています。

 

さらに、イノベーションと創造に関しては、知的財産権の保護の必要性が強調され、それと同時に貧しい国のためには医薬品へのアクセスを確保することが必要であるとしています。TPP交渉では、医薬品の知的財産権の基準を策定すると共に、途上国に対してそれぞれの国情にあった弾力性を許容するよう求めたいと述べています。知的財産は、イノベーションと創造にとって不可欠なものであり、TPPやT-TIP等の交渉では高い基準の知的財産の保護を求めること、また知的財産権の侵害に対しては、あらゆる貿易上のツールを動員して対処すること、さらに今後においても通商法上のスペシャル301条等を活用して知的財産権の保護の改善と権利行使を図るとしています。

 

以上の横断的な課題のほか、2015年に取り組む具体的な通商協定の交渉についても取り上げられています。

 

まずTPPについては2015年には交渉を完了するよう作業を進めること、他の協定以上に強力な労働や環境に関する条項を設けること、また国家所有企業の規律やデジタル面の規制にあり方、イノベーションに関する規定、腐敗行為の撲滅、小規模企業への対策等についての規定を設けることを求めたいとしています。

 

また、T-TIPに関して、米国と欧州連合はすでに巨大な貿易投資関係を築いているが、欧州委員会の顔ぶれも変わり、昨年11月、オバマ大統領と欧州連合の首脳は、野心的で、包括的かつ高い基準のT-TIPを締結することを再確認しており、T-TIPの交渉は、2015年には大きな前進が見られることを期待しており、物品、サービス、投資面での野心的な市場開放を求め、規制上の障壁や非関税障壁についても取り上げることになるとしています。また、小中規模の企業の環大西洋経済への関与の度合いを強めること、さらに新しいデジタル経済における貿易上の課題についても取り上げるとしています。

 

ITAの対象品目の拡大交渉については、2014年のAPECの会合において中国がこの交渉に参加することとなり、急速に技術革新が進むこの分野で関税無税とされる対象品目の拡大を目指す交渉を今後も強く推進したいとし、またサービス貿易協定(TiSA)についても米国がリーダーシップを発揮して交渉を進めたいとしています。

 

WTOについての記述では、国際ルールに基づく多角的貿易システムを強化し、グローバルな貿易ルールを執行するための極めて重要な機関であり、同時に保護主義に対する重要な防波堤となっているとしてその重要性を強調し、WTOのTFAに関して米国は今年初めに完全実施を可能とする最終的な措置をとったところであること、またドーハ・ラウンドの完成に向けた話し合いにおいて米国は主導的な役割を果たすとしています。ただ、これに関連して2014年には特に新興諸国との間で様々な課題が浮き彫りになったことに言及し、2015年においても、このような困難な問題が続くと考えられるが、グローバルな経済成長、開発等のために、ドーハ・ラウンドの目標を達成すべく引き続きプッシュしたいとしています。

 

また、米国が通商協定の交渉と並んで重視している通商上の権利行使に関しては、米国の通商上の権利が侵害されているかどうかを絶えず監視し、権利行使を積極的に行うことは、米国経済の成長をはかり、米国の国民の生活を守る上で不可欠のことであると述べ、そのため、不公正な通商上の障壁に対しては利用できるあらゆるツールを動員し、これまでのように、対話とWTOの紛争解決手続を活用するとしています。WTOの紛争解決手続に訴えて解決された事例として2014年の成果が列挙され、特に中国のレアアースの輸出規制、中国の米国製自動車に対するダンピング防止税や相殺関税の賦課、アルゼンチンの輸入ライセンス制による規制、インドの米国産食品の輸入の禁止をあげ、これらの成果は、いずれもWTOの手続の重要性を裏付けるものであるとしています。

 

2015年の最優先事項は中国等のWTO上の義務を課されている国に対して米国が同等の競争条件を守るためにWTOの手続を積極的に活用することであり、2014年からの懸案事項である中国の米国製鉄鋼の一部に対するダンピング防止税や相殺関税の賦課、インドネシアのライセンシング措置、インドの太陽光発電装置へのローカルコンテンツ要件等が上げられ、また欧州連合について、エアバス航空機への補助金支給の問題についても引き続き追及するとしています。

 

(出典:2015年3月4日、USTRが公表した2015年通商政策アジェンダ(2015 Trade Policy Agenda)より)