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ボーイング社への補助金をめぐるWTO紛争(WTO) (2011/04/07)

WTO

ボーイング社への補助金をめぐるWTO紛争
-パネルは、EUの主張を概ね認める-

欧州連合(EU)からの提訴を受け、長年にわたって米国とEU間で紛争案件となっていたボーイング社への補助金交付の問題について、WTOの紛争解決小委員会(パネル)は2011年3月31日付けで報告書を公表した。

同報告書によれば、EUが申し立てた事項は大きく二つに分けられ、米国連邦政府および州政府によってとられている税制上の優遇措置は、WTOの「補助金及び相殺措置に関する協定」に抵触していること、ならびにボーイング社に対して交付されている補助金は、同協定において禁止された補助金に該当し、これによって欧州共同体の利益が損なわれたとするものである。

パネルは、その報告書の中で、税制上の措置としてEUが問題とした外国貿易法人(FSC)及び領域外所得控除(ETI)については協定に抵触する措置であるとしつつも、一部の州においてとられた税制上の措置については、EUの申立ての内容では協定違反を立証するには十分ではなかったとしている。
また、EUに対する悪影響に関しては、米航空宇宙局(NASA)や国防総省等の研究開発支援、FSC/ETIの補助金等については肯定的な判断を下した。

パネル報告を受け、同日発表されたプレス・リリースにおいて、EUは、米国の連邦及び州がボーイング社に対して交付した補助金は、この報告書によってWTO協定に違反した補助金に該当するものとされたとし、1989年から2006年までの間に少なくとも53億ドルの違法な補助金が交付されており、さらに、将来においても30~40億ドルの補助金が予定されているとしている。具体的にあげられている補助金としてつぎのものがある。
① NASA及び国防総省からボーイング社に対して交付される研究開発プログラムに基づくもの・・・・13億ドル~20億ドル、
② NASA及び国防総省の「一般的な支援」によるもの・・・・15億ドル、
③ 外国貿易法人(FSC)による輸出補助金・・・・22億ドル、
④ ワシントン州の税制上の措置・・・・40億ドル(2006年~2024年)

また、この発表の中で、EUのエアバスへの補助金を巡る事案と対比し、EUの場合は有利子の返済を伴うものであり、WTOのルールに合致したものであるが、その一部について通常の融資との条件面の違いから補助金とされたものがあったのに対して、米国政府等の措置は返済を要しない無償交付や政府の施設の無償提供等を含むものであり、EUの場合とはまったく異なるとしている。

欧州委員会で通商を担当しているカレル・デ・クフト委員は、「このWTOのパネル報告書によって、ボーイング社がこれまでに巨額の補助金の交付を受けていたこと、また今日でも相当な額の補助金を受けていることがはっきりした。この紛争は2004年に開始されたが、米国連邦及び州政府を通じてボーイング社に交付された長年にわたる何十億ドルもの補助金が違法なものであることがこの決定で明確になった。」「これらの補助金によって、エアバス社は販売を喪失し、旅客機の販売価格が引き下げられ、また市場シェアも相当ボーイング社に譲ることとなり、EUの利益が実質的に損なわれた。」「我々はWTOパネルの報告書を歓迎するものであり、米国政府が相互に合意できる解決策となるような適切な措置を講じることを要請する」と述べた。

同日、米通商代表部(USTR)もコメントを発表し、その中で、米国が提起したエアバス開発をめぐるEU諸国の補助金問題に関して出されたパネルの決定内容に言及し、EUのエアバス開発のためにWTOのルールに違反して交付された補助金の額は、200億ドルにも達するのに比べれば、今回のパネルの報告で米国の主張が認められなかった補助金の額は27億ドル程度のもので、多くの点で米国側の主張が認められ、EUの主張が認められた部分は一部の分野にすぎないとして、パネルの報告を歓迎する内容の声明を発表した。

WTOのルールでは、補助金等が一定の企業に特定して交付され、WTO加盟国の利益が悪影響を受ける場合には、ルールに抵触するとされるが、EUが申し立てた内容のうち、米航空宇宙局(NASA)の研究開発費の一部(26億ドル)、ワシントン州等の税制面の措置等(1,600万ドル)、その他国防総省が資金提供をした研究開発支援の一部(112百万ドル)が、競争関係にあるエアバス社に対して悪影響を与えたとしてEUの主張が認められたにすぎないとしている。

USTRのカーク代表は、今回のパネルの報告は、「過去20年来、主張してきた米国の意見、すなわち欧州がWTOのルールに抵触してエアバスに交付してきた補助金の額に比べれば、米国政府がボーイングに交付してきたものは僅かなものであるとの立場を確認したものである。連邦政府や州政府が米国の労働者や諸企業に対してとってきた様々な措置は、おおむねWTOのルールに合致したものであることを、本日のパネル報告が示している」と述べた。

WTOの紛争解決手続により、両当事国は、30日以内に、今回のパネルの報告書について、紛争解決上級委員会に対して上告することができる。

今次のパネルの報告に対して、EUは報告書の内容には法的な解釈や適用面に間違いがあるとして、4月1日付けでWTOの紛争解決上級委員会に対して上訴する旨を通報した。なお、EUは2010年7月23日に出されたエアバスに関するパネルの報告に対しても上訴している。

(出典:3月31日付のWTO文書WT/DS353/R、及び同日付のEUプレス・リリース及びUSTRのプレス・リリース、4月4日付のWTO文書WT/DS353/8

※過去の関連ニュース
「エアバスへの補助金問題に関するパネル裁定 -EU,WTO上級委員会に上訴を決定-」
2010年7月23日更新