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「ベトナム貿易のリスク管理」開催レポート

第1部:「海外事業展開とビジネスリスクマネジメント」 コンサルビューション(株)代表取締役社長 高原彦二郎 氏
第2部:「ベトナム進出における注意事項、労働法関連」 AIC Vietnam Co.,Ltd. General Director  斉藤 雄久 氏
第3部:「ベトナム進出後のビジネスリスクとその対応」 AIC Vietnam Co., Ltd. Manager  今村  茂 氏

 

昨今、チャイナリスクを回避するための手法として、チャイナ・プラスワンという戦略が脚光を浴びるようになったが、そのなかの一つとして数えられているのがベトナムである。
今回のセミナーは、前半がビジネスリスクマネジメントの概論、後半が企業が実際にベトナムで直面するであろうビジネスリスクについての各論的な話で、実例を交えながらの解説に参加者も熱心に聴講していた。
セミナー参加者の多くは、中間管理職の方と見受けられ、既にベトナムに進出している企業様はもちろん、これから進出を予定している企業様など、25名の参加で会場はほほ満室状態であった。

 

海外事業展開で日本企業が犯すマチガイ

日本企業は、海外事業を展開する際、悲観的な考えを排除するという傾向が見られる。
たとえば、新しいプロジェクトを始めるにあたり、担当者がデータ分析など事前調査を行ったとする。その分析の結果、失敗する可能性があるというような報告を行っても、経営陣はその調査結果を信用しない。それだけに止まらず、その担当者をプロジェクトから外し、指摘されたような負の部分には触れないようにプロジェクトを進めようとする。結果、事業を失敗するというケースがことのほか多い。

悲観的な考えに耳を貸そうとしない日本企業にとっては、まさにリスクを客観的にとらえることが重要である。ビジネスにおいてリスクはつきものであるが、そうした中で「そのリスクはどの程度危険なのか?」、また「リスクを犯すことでリターンは得られるのか?」を判断する必要がある。
海外事業で成功を収めるためには、短期的視野ではなく、リスクとリターンを慎重に見極めつつ、中長期的視野に立って戦略的な意思決定を行っていかねばならない。

 

 

ベトナム進出前にやるべきこと

ベトナムは治安はいいのだが、共産党一党独裁による社会主義国家であるため、政治的な発言には注意する必要がある。ただ、国民に不満はあっても、暴動やテロを起こすまでには至っていない。
近隣諸国との付き合い、とりわけ中国には過去に侵略された歴史があるため心中穏やかではないだろうが、いまや世界第2位の経済大国となった中国に対する貿易依存度はやはり高い。
ベトナムのGDPは日本の10分の一程度であるにもかかわらず、物価は高く感じる。ただし、都市部と地方との所得格差が大きいことから、高級品がバンバン売れる市場とは言えないが、日本企業にとって魅力ある市場であることには変わりない。

そこで、ベトナムで事業展開する際に注意すべき点を以下にまとめてみた。
 ・相手の言うことが、常識とかけ離れていると感じたときはすぐに指摘すること。
 ・ベトナムは文書主義なので、行政からの口頭での指導には、文書での送付を要求す ること。
 ・ベトナムの法令は、末端まで周知されること自体が希である。すべてにおいて法令を遵守することは不可能であるため、重要かどうかを判断し対応すること。
 ・行政とのコネクションを強調する相手や日本語ができる相手を簡単に信用しないこ と。
 ・コンサルタントへの報酬は、現地で一定の相場が確立されているので、他と比較をして判断すること。

 

ベトナムは可能性を秘めた投資環境

ベトナムで事業展開する場合の主なビジネスリスクには、政治・経済・社会環境の変化(中国に対して関係が悪化していることから、日本が参入するチャンスともとらえることができる)、自然災害リスク(台風などによる被害)、インフレリスク、為替リスク(ベトナムドンはUSDに連動しているため、影響を受けやすい)、コンプライアンスリスク、信用リスク等がある。
ベトナムには上記のようなビジネスリスクがあり、短期間で一攫千金を狙える投資環境にはないが、上手に付き合っていけば有望な投資先となり得る可能性を秘めている。

そのため、相手を事前によくリサーチしておくことがビジネスにおいて重要となってくる。また、国内の法整備が不十分ではあるが、それをよく理解することでリスクを最小限に抑えることが可能である。

ベトナムでは、企業誘致を進める当局と規制を担当する当局が併存し、それぞれが異なる政策を用いているので、注意が必要である。
万が一、危ないと思ったなら、まずは法令を確認し、事例調査を行うこと、そして躊躇なく専門家へ相談することである。これだけでもリスクの軽減を図ることが充分可能となる。また、ハノイやホーチミンのように南北の地域差があるケースでは、それぞれの慣習等も異なるため、相談する専門家を変更するなどの配慮も必要となってくる。

 

 

聴講させてもらい、まず一番に感じたのは、ベトナムが「文書主義」国家であるということだ。法整備の面では、まだ不十分な部分も多々あるようだが、基本的には法治国家であり、様々なビジネスリスクにどう対峙していくか、それによって日本企業の事業展開も先が見えてくるのであろう。
簡単に相手を信用してしまうのは日本人の悪い癖である。ベトナムは親日ではあるが、海外ビジネスで新たな事業展開をする上で最も大切なことは、現地任せにすることなく現場をいかに上手くコントロールするかである。

(文責 A.A)