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「保税研修」レポート(2014年11月20日開催)

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「保税研修」レポート(2014年11月20日開催)

 日本関税協会では、税関の協力のもと、関税政策・制度の周知および通関実務等に関する研修会や説明会を全国各地で行っています。

 大阪支部では、賛助会員はもとより、一般の関係店社にも広く門戸を開放し、毎年、法令改正、関税評価および原産地規則といった時宜に即したテーマを取り上げています。

 今般、環日本海貿易の拠点として発展している富山県伏木港にある伏木税関支署(富山県高岡市)で、「保税研修」が実施されましたので、その様子をご紹介したいと思います。

「保税制度の概要や基礎知識について」

日 時:2014年11月20日(木) 13:30~15:30
場 所:大阪税関 伏木税関支署会議室
講 師:大阪税関 森田統括監視官
         黒川上席監視官
         長尾上席調査官
参加者:関税協会賛助会員他40名

富山県高岡市伏木 伏木港は、明治22年(1889)7月に四日市港などとあわせて我が国で一番早く特別輸出港に指定されました。しかし、当時は輸出商品が限定(米、麦、麦粉、石炭、硫黄)されていたため、輸出するまでには至りませんでしたが、27年に特別貿易港に指定されたことで、ロシア領沿海州サハリン島および朝鮮国に対して交易が始まり、以降、伏木港の貿易額は年々増大し続け、32年に開港に指定されました。

 以降、日露戦争や第二次大戦等の影響により定期航路の休止や税関の閉鎖等がありましたが、昭和26年4月に伏木港は、重要港湾に指定され、伏木富山港と改称し再開されました。あわせて伏木税関支署が北陸経済圏の産業経済活動を支える一大物流拠点として昭和21年6月に設置されました。

 

伏木港湾合同庁舎 外国貨物について関税の課税を保留される状態を「保税」といいます。この「保税」が適用される地域を保税地域といい、外国貨物の蔵置、加工・製造、展示等を行うことができる場所(倉庫や工場等)となっています。最近は、貨物の積卸しや検査、輸出入手続を始めとした税関への申告等、時短化が進んでいます。そうした中にあって、保税制度に関する正しい知識を学ぶことが特に重要となっています。

 

【伏木港湾合同庁舎】

研修の概要

 まず、本研修の目的に続いて保税制度の概要や制度の目的である「関税等の適正な徴収の確保」および「適正な輸出入通関の履行の確保」について説明がありました。

【コンプライアンス整備は自社から】

森田統括監視官 税関では法令遵守について企業に指導していくことが重要と考えており、特に保税許可申請時に企業から提出された「貨物管理に関する社内管理規定(コンプライアンスプログラム)」について、もう一度見返しておくことが重要です。

 なぜなら、社内管理規定には、「教育訓練についての体制の整備」や「評価・監査制度の整備」、「懲戒規程の整備」などを取り決めた社内ルールが書かれているからです。これは税関へ許可申請した企業によって内容(ルール)が異なります。そのため、新人の方にはルール習熟のため、ベテランの方には今一度注意喚起のため、企業毎に教育研修を行って欲しいと考えています。

 また、保税許可の処分については、点数制が設けられていることから、もし社内で非違を発見した場合は、自発的に税関へ申し出ることと、すぐに社内で再発防止のための方策を講じることで点数が減算されることを強調していました。

【事例による注意喚起】
--非違事例として記帳義務違反が多い

長尾上席調査官 例えば、NACCSで配信される管理資料の取得・保存し忘れによる保存台帳の未作成が多く見受けられています。CSVファイルの保存し忘れやバックアップをしていないなどの人為的な要因によるものです。そのためには、複数の人で確認する体制を作ることやチェックリストを作成し管理していくことで防止可能です。

 上記以外にも「見本持出し、貨物取扱いに関する記帳漏れ」などの記帳義務違反は、非違事例の中の78%を占めており、社内においても十分に注意していただく必要があります。

 

--保税管理台帳の記帳のポイント

黒川上席監視官 外国貨物を入れた場合には、「貨物の記号、番号、数量」の3つが正しく記載されているのかを書類を手にし、確認してください。特に数量においては10カートンと10ロールでは全く違う貨物になってしまいます。

 また、輸入許可前に行うべき「見本持出確認登録(MHO業務)」を輸入許可後に行うケース(記帳漏れ)があります。このような時には登録する前に速やかに税関へ連絡・相談してください。

 

 

 

 普段、なかなか聞くことのできない税関での事例や具体的な解説を耳にして、熱心にメモをとる参加者が多数見受けられました。

昨今の貿易概況

--参加された方から、お話をお窺いしました。

上屋倉庫 昨今の伏木富山港を中心としたコンテナの貿易量は前年に比べて10%程増加しているそうで、通関業務も増えているとのことでした。

 富山県内の保税地域は、伏木地区、富山新港等に集中しており、そちらを利用した通関が行われています。

 取引相手国は、ロシアがコンテナ船や定期船の運航により貿易相手国の中心(中古自動車や部品等)ですが、中国や韓国などのコンテナ船も運航しており、取引が活発に行われております。そして、中国や韓国への定期船の就航を県に対して要望しているそうです。

 また、富山県は製造業者が多く、原料(アルミや木材)を輸入し、県内で製造の後、製品として輸出しています。

あとがき

 参加者の多くは、中堅以上の責任のある役職と見受けられる方が多いように感じました。研修後は、社内勉強会等でレクチャーするお立場なのではないでしょうか。

 また、税関から配付された資料は、事例が多数掲載されて充実した内容でしたので、そのまま社内勉強会等で活用できそうでした。

 なお、本研修会の取材にあたり伏木税関支署の方々、伏木海陸運送株式会社の越前伸夫氏に多大なご協力をいただきました。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。(文責H.U)